遠く離れて

昨日は会社を休んで、いつもと反対方向に電車に乗り、乗りなれない路線に乗り換え、ちょっとだけ郊外の街へ。駅前のごちゃごちゃと店が並ぶエリアを過ぎて歩いていくと、変わったと感じる風景が突然訪れる。坂を登って下る途中に給水塔がにゅっと向こうに見えたりする。住宅と畑の間の道を抜け、谷の合間の幹線道路を超え、沢のような道を進むと山脈のように巨大団地が並んでいる。集落のような団地を超えて、山を下るように歩みを進めると、丘陵を切り開いた土地に階段とセットで立つ家々があり、八百屋や肉屋があり、居酒屋があり、チェーン店が増えて、中古レコ屋に寄って７インチ買って、駅に戻った。駅前には警察官とピーポくんがいた。快速に乗って途中下車、珈琲豆を買って新年のご挨拶。そしたらもう夕方だった。

平日のお休みはあっという間に過ぎていく。

今日は渋谷へ。その名の通り「谷」のある街。ビルが山のように連なっている。駅周辺を歩いてから「8月の終わり、9月の初め」を見た。久々のル・シネマ、背もたれにまっすぐ座る男性が字幕半分を覆い隠すため、体を斜めにしながら見た。うぐぐ。原題「Fin aout debut septembre」なので、直訳と言える邦題に惹きつけられずにはいられない。1998年制作という時代がスクリーンに溢れていた。彩度が低い世界は冷たいだけではなくやわらかさが残っている。女性の眉は細く、ピタッとしたTシャツという姿は、フランスもなんだっけ。。。クロエ・セヴィニーみたいなベリーショート！登場した途端スクリーンがキラキラ輝くほどの素敵な子は、ミア・ハンセン＝ラヴだった。会話に出てくるのは「ステレオラブ」に「マトリックス」、原稿の文字データはフロッピー、デスクにはmacの一体型筐体。そして、部屋の固定電話が鳴り、連絡が付かないのが日常的な時代。淡々と綴られる、ある一時期の出来事。アサイヤスは43歳？、この歳なりのあれこれがありながらも気持ちはまだまだ全然若くって、若さゆえの感覚が散りばめられていたのと、ミアは確実に影響を受けているなーと思わされた。
あの頃見ていたら、あまり楽しめなかったかもしれない。そして、90年代から遠く離れてしまったんだなと強く感じることに自分でも驚いた。最寄り駅へ戻ると暗くなってきた空に一番星キラリ。

年末年始メモ

12月28日
ここ数年の恒例で、焼き菓子屋さんで詰め合わせ購入。ご挨拶用ではなく、我が家用である。ここから南へ歩き、夜はお好み焼き！ソースは麻薬である。

12月29日
珈琲豆を買いに行くと、いつもBGMの無い静かな店内に、ドスンドスン！と音が響く。なんだろかと思っていたら、お隣の和菓子屋さんが餅をつく音だった。年末の音だったのねえ。そのあとは、一時停泊中の喫茶店へ。店主さんと「年末の気がしませんねえ」なんて話して最後に「良いお年を」とご挨拶、「年の瀬の気分になった？」と笑い合う。山手線で通り過ぎた原宿、竹下通りの人の多さに驚愕。

12月30日
カーペンターズが流れる店でカレーを食べた後渋谷へ。もうすぐ閉店し解体される東急東横店を向かいに見ながら、坂倉準三が想像した2020年の渋谷はどんな街だったのかとふと考える。

12月31日
大晦日恒例、ひきこもって2019年のことを記した日。spiritualizedが謎のイベントで来日公演２DAYS。アコギでwalking with jesusってどういうこと……。集客悪かったらしいけど、それは呼び屋と日程のせい。

1月1日
具は芹と柚子だけの、ハードコアな金沢雑煮でおめでとう。氏神さまへ初詣してから歩き始めて、大きめなお寺へ参るコース。ちょっと早めだったからかちょうど空いていた。夜は西島さんが作る晩ごはん見ながら（あ、例のドラマね）、具だくさんの炊き込みごはんあれば、おかずなんて要らないよ！いろんなおかずありすぎてナゾ……って悶えた。

1月2日
窓柴がいた！新年早々縁起が良いねえ（「窓柴」とは、通りかかりの家で見かける、とある柴犬のことである。とてもかわいいのだがたまにしか見かけないので、勝手にラッキーアイテムにしているのだ）。山を切り開いて造成した住宅街を歩いた日。

1月3日
姪っ子が自作のなぞなぞを出題してくれたのだけど、答えがすぐわかってしまい、悩むふりをしてしまった。

1月4日
表参道から渋谷〜代々木上原を歩く。不思議な扉を見つけた。

1月5日
イメージフォーラムにて、アニエス・ヴァルダ監督「ダゲール街の人々」を見る。その街で生きる人々の顔、声、仕事をする手。現実をそのままに撮りつつも、魔術師の采配でふわっと夢を見た気持ちになった。真実と虚構を行ったり来たり。15年位前に見た「阿賀に生きる」「阿賀の記憶」をふと思い出した。

年末年始もいつもどおりな日々でした。