feu follet

「前はギターだけでも曲が成立するような感じの演奏だったけど、今は三つのパートが合わさって初めて曲になるような感じを目指している」
これはミュージックマガジン最新号でのインタビューにおけるヤマジの発言。今更そんなこといってんのカー!とツッコミをいれたくなるのだけども、そんな今まで欠けていたトコが良くも悪くもdipでありそんな彼らが昔も今も大好きな私である。ちなみにいえば2004年、前作について当時こう書いていたよワタシ!
「以前はギターが前面で鳴っていればな世界だったけど、今はバンドアンサンブルに目を向けているような。。その辺がこのところのライブで感じていた変化の現れのように思う。」・・・ええ?(→詳細はコチラ「fun machine」)

feu follet(フ フォレ)

feu follet(フ フォレ)

で本作。好きだ好きですカッコイイ!と素直に思います。「feu follet/鬼火*1」、今まで聴いたことないひとにも是非聴いて欲しい。ジャケは最近装丁などでもお見かけするカズモトトモミさん作で、真っ赤なあの娘がなんとも素敵。この何作かジャケがどうにもイマイチすぎたのでウレシイなあ。ジャケから音がニオイ立つ廃盤の4thがitsで買えてしまう昨今、大切にしたくなるジャケってのはいいなあ。歌詞部分のぐにゃりさはUKPでの1stを思い出した人も多かろう。黄色いディスク面に描かれたイラストも素敵。
以下イタイほど長いのでタタミマス。。。
さて。レコーディング中にベースのヨシノさんが脱退したためにヤマジさんがベースを弾くという事態に至った本作、そういう話を聞くと既にメンバー間がバラバラ状態であったという「weekender」の荒涼とした空気を思い浮かべますがそれはなく、今までの音が根底にありながらも「新たな地平を踏む力」が感じられます。
発言にもあるように音をつくっていくオモシロさを突き詰めるのだと思わせつつも、唄うことに自覚的になってきたようで、そのへんのどっちつかずな部分がわかりやすく出てる6曲目「corbusier」はへんてこな曲でおもしろかった。前半は3rdあたりの頃を思い起こす唄モノだけど後半唐突に背負い投げされたよに続くインスト部分がイイ。歌詞の意味ありそうでないとこも好き。
あとライブでも大好きな10分に及ぶインスト「feu follet」をアルバムで聴けて嬉しい。暗がりのなか地上30センチくらいのとこをふらりきりりゆらりと旋回し続け静かにぬっと立ち上ると、ぼっと灯りしゅわああっと消えていく光。

「こだわるところ」を改めることで随所に配慮した部分は確かにあるけれどこれからなんだろうな、と思うのが正直なところ。もっと音の余韻の隅々にまで神経つかって練って練って壊して捨ててまたつくって壊してを繰り返した先のものが聴きたい。音響に関してももっと全体を箱として捉えて聴こえる響きや空気の刻みを感じたい。
ポップだったりフォークだったり「歌謡曲的メロディメーカー」としての地の部分と、「グランジな」これまでに吸収した部分*2と、音を重ねて引いて作り上げていくポストロック的(といういいかたはよくないけど)新しい部分、これらが「ジャンル云々」という定義づけなど関係なく「編集」などなく一切合財集結しちゃっているのがdipだなあと思う。
しかしこのバラバラなテイストをここらでどうにかまとめるもいいんじゃないだろか。やはり内輪のスモールサークルの数珠ではなく外部の客観的で冷徹な視線が重要だなと改めて思う。
2005年に活動休止という話を知ってこんなことを書いた。
「もしかしたら今、ヤマジは外に出ていろんなツワモノたちと交えるのがいいかもしれない。それこそ宮本武蔵みたいにね。そうすることで、益々凄まじくなる「dip」を我らは聴きたい、見たいのです。」(詳細はコチラ→live at 大阪drop
活動休止以降、ダモ鈴木さんを始めいろんな方々とセッションしたなかでヤマジ40にしてこの言葉、
「今までこういう世界があるっていうのを俺は知らなかったんだなって。曲の楽しみ方がわかっていなかったんだっていうか、浅い部分でしか楽しんでなかったんだよね、きっと。」私自身もこれを読んで我が身を振り返った次第。
ヤマジカズヒデ ソロ BOX SET 3枚組

ヤマジカズヒデ ソロ BOX SET 3枚組

ヤマジソロも先日再発されたのですが、「ばるぼら」のような曲はソロでやるのはどうでしょう。ある意味枯れてきた今、若き痛みや手の届かない憧れを形にしたのではなく、たったひとりでつくるのではなく、シド・バレットではなくてエリオット・スミスみたいなアルバムをつくることができるのではと妄想するのです。

ヤマジソロの帯に「孤高の天才」と冠つけたのは北村さんだったか。この言葉を誰もが気恥ずかしいと思うのは勿論ですけどそこに囚われすぎてたようにも思う、ヤマジ自身も我らファンも。しかしもう、その冠は付いていないのだよね、うん。

*1:ヤマジmyspaceによると「岸恵子NHKの番組でインタビューに答えていた中に『体の中に、一瞬フーフォレ(鬼火)のようなものが入り、自然な演技、そのものができる時がある』というのがあってそこから引用したのです。」

*2:うわコレソニックユースだよとか、ジャングリーでビルト・トゥ・スピルっぽいなとか、何故いまロックー!なこの曲を再録?とか、イチイチ反応してしまうけども。