晩秋のおもいで

ごとごとと列車を乗り継ぎ終着駅、祭りの跡のようにぽっかりと空いた駅前は盛りの日々を思い出すようにイルミネーション点灯の準備中、路地を入ればそこは何も変わらずに今もひとびとが毛糸を巻きつつ暮らしている。薄い青の空に赤い縞模様の煙突が目印だ。ふっと息を吹きかければ途端にカタカタ動き出す愛らしい箱が並ぶ街。それからどれほど歩いただろうか、ゆるやかな坂の上にぽつんと建つ赤い小屋。どきどきしながらぎいいと扉を開ければいいにおい。トントンと階段を上がると大切に閉まっておいた宝箱を開けたよなここちになった。家人がゆっくりと丁寧に紡いできたこの家の空気に包まれて、ここにやってきた不思議な繋がりがあたまをぐるりと巡っていた。窓の向こうに柿の木、ああ鳥がつつく果実がひとつ、いまにもぽとんと落ちそうだ。