最近見た展示メモ


毎度個人的メモですみません。


●「松本陽子 + 野口里佳 「光」」

鳥を見る―野口里佳作品集

鳥を見る―野口里佳作品集

国立新美術館にて。野口里佳さんの展示から見る。構成が素晴らしく、部屋に入るたびに染め変わる世界に息をのんでくらくらして、空間に溶けてしまう。彼女の作品をこうやってまとめて見ることのゼイタクさ。ラストの1枚、ひゅうんとした頼りない軌道が妙にココロにきて涙がこぼれそうになった。
一方を見終わると通路を辿ってそのまま、もう一方の展示を「後ろから」見ることができるけれど、頭に戻って見るべきではないかなあ。松本陽子さんの作品は女性作家ならではのでろり感があって、私には重かった。そもそもこの2人の組み合わせで展示するのがナゾなんだけど。明日10月19日(月)まで。



●「柳宗悦の世界 〜生誕120年記念特別展〜」

民藝とは何か (講談社学術文庫)

民藝とは何か (講談社学術文庫)

日本民藝館にて。雨がさらさら降る中のここはとてもよいなあ。気持ちがしゃんとして穏やかになって。うつくしいもの。芯が太くゆるぎない強さを持ったうつくしさ。柳宗悦がわたしたちに伝えたいこころが、静かに伝わってくる。ひとつひとつゆっくりと、見た。窓の向こう、立派な壷がいくつもあって、そこへ雨粒がぽつぽつと落ちていく様でさえも。11月19日(木)まで。



●「一丁倫敦と丸の内スタイル展」
三菱一号館にて。復元された建物もさることながら、三菱の並々ならぬ気合いを強く感じさせる充実した展示内容。明治からの貴重な資料満載で、図面や映像に興奮した。
「どーだ」といわんばかりのモノが延々続いて、最後のコーナー。ここを建てた土方のみなさんの笑顔を撮影した、梅佳代さんの写真がよかった。三菱がスゴいこと散々言っても「作ってる」のは彼らなんだよね。うん。彼女を起用したひと、すごいわー。
で。「遺産」を「ビジネスとしての価値がある」と掘り起こすこと自体は、勿論素晴らしいとは思うけれど、丸ビルだとかつくっといて、いまさら昔のビルジングを復活させているこの矛盾にもやもや。。。森ビルとは歴史が違うぜ、って言いたいのはいいんだけど、なんだかなあ。。。2010年1月11日(月・祝)まで。



●「ルイス・バラガン邸をたずねる」展

カーサ・バラガン

カーサ・バラガン

ワタリウム美術館にて。バラガン展といえどもタイトル通り、の内容。
ワタリウムの変型不思議な空間が「妹島和世+西沢立衞/SANAA」による構成のもと、書籍や絵画に生活雑貨など実際の所蔵品を使用して、バラガン邸に染め変わっていた。建築についての展示というのはなかなか難しいけれど、こういう切り口でというのがワタリウムらしいなあというか、バラガンそのものよりもワタリウムの精神性の強度を再確認した次第。2010年1月24日(日)まで。



● サンテリ・トゥオリ展 「命のすみか-森、赤いシャツ、東京」
これは素晴らしかった!表参道スパイラルが北欧の森になった。普段座ってぼーっと外を眺めてる階段までも森の写真で覆われていて、ぐっときた。写真にロケーションが同じ映像を重ねることで生まれる不思議な動き。フィールドレコーディングされたサウンドインスタレーションも重なって、まさに「森が生きている」。しかし、後ろからはカフェの雑音が聴こえてくるから、相反するものにサンドされて、奇妙な世界に落ち込んだよう。とてもオモシロかった。(会期終了:9月9日から9月27日まで)
http://www.spiral.co.jp/e_schedule/2009/09/post-29.html



● 女性アーティストと、その時代
資生堂ギャラリー開廊90周年記念、というその年月に敬礼。青木野枝さんの「空の粒子」がとてもよかった。鉄製の彫塑が軽やかに拡散する、まさに「空の粒子」。行政はこういう作家の作品を公園や街角に置くべきだよねえ。ピピロッティ・リストもやっぱりいいなあ。愛らしさが好き。「資生堂ギャラリーで開催した展覧会が、それぞれの時代にどのように評価されていたかを検証すべく、批評記事が掲載された雑誌を数多く展示*1」した一角も楽しかった。これからも存在意義を発揮して、新しい世界を見せてほしいなあ。(会期終了:本日10月18日(日) まで)

*1:HPより転載