拡張スル

帰りにレコード&カワイイもの屋さんに立ち寄ると、入荷したばかりという7inchをオススメと掛けてくれた。ポコポコとふあふあと流れだす素敵メロディ。わあ、いい曲だなあ。すっと胸に入ってくる。ジャケのヌケたイラストも愛らしい!これと、店主さん作成mixtapeを購入。ああ、こんなふうに音に出会えることがとても嬉しい。決め打ちではなく、頭になにも入っていない状態で、これいいですよって手渡ししてくれるの。
マンションの一角の「この場所」に通いつめて何年だろう。90年代初頭、初めて来たときは違うレコード屋で、それから違うレコード屋になって、そして今。ずっと、この場所で・手書きカードを見て・店主さんと話して、レコードやCDを買い続けているのだなあ。
夕暮れの空がきれいだ。雲の縞模様。オレンジとピンクの混ざり合い。

::::::::::

拡張するファッション アート、ガーリー、D.I.Y.、ZINE…… (P-Vine Books)
最近読んでいたのは「拡張するファッション」。抱きしめたくなるよな書籍だった。いや、抱きしめられたかのような、そういう本、大切にしたくてここで記すことを躊躇するくらいの*1
発売を楽しみにしていたのは林央子さんの著作だから。「パリ・コレクション・インディヴィジュアルズ」を始め、彼女の著作には毎度頭をキリリと啄かれる。新鮮でパッと目が覚める思いと、やわらかにフッと安堵する思いと、明日が楽しみになってシャンっと動き出してしまう力を持っている。
本作は『現代的なクリエーションとは何か?ということを、ファッションを軸に』語られており、特に’90年代からの『ネット上で情報が整理されていない』が『実は重要な文化のディテールである断片』が集積されていて、それだけでもう私は居ても立ってもいられなくなる(『』内本文より引用)。
あの頃からオンタイムで活動を目にしてきた方々の各インタビューのひとつひとつに、こころ揺さぶられる。あの頃よりも違う部分が刺さったり、刺さり方が違ったりするように思う。彼女たちの言葉の鋭さと浸透力は「自分だけのスタイル」を持っているからこそだ。
そしてそんな言葉を浮かび上がらせた林さんの「聞き手」としての素晴らしさ。そしてただひとときインタビューして終わりなのではなく、林さんのなかで蓄えられたり、方方に萌芽したたくさんのものをひとつひとつ拾い集めることで、今に確実に繋がっていたり更に広がっていることを教えてくれる。
何気なく、どの頁をめくっても、ミントを噛んだよな気持ちになる。いつまでもそういう本であると静かに強く確信する。

*1:敢えて言いたくないコトってあるでしょう?それと、本書で使われるキーワード的な言葉のいくつかは婉曲されがちで、使い勝手が難しい