「THE ”LAST” LAST BAUS」〜 シャウト・5 windows・シミラーバットディファレント・ウイズネイルと僕

5月19日月曜日が私の「ラスト・ラストバウス」でした。爆音レイトの帰り道のシャッターの閉まったアーケードをツカツカ歩くのも、空いてる電車でぼんやりするのも。バウスで映画初めは爆音の「右側に気をつけろ」2005年の上映時でした。こういう企画が出来る「街の」映画館だなあと改めて思いながら電車に揺られていました。


まずは5月7日にスコリモさん(イエジー・スコリモフスキ監督)の「シャウト」を。どんな映画なのかよくわかんないまま見たけど、いやー凄かった。この監督は「耳がいい」ので爆音で見ても音のバランスが面白いんだけど、これもホンット、音の映画だった・・・。自宅スタジオでアナログシンセやらノイズ採取やらするレコーディングシーンに興奮してからの 〜 自転車疾走で教会にダーッとなだれ込む一連の流れ(子供が跳ねてるとか!)には痺れたー。
目に見える物が音符みたいだった。音が「見えない存在」として強調されて「立ち位置」が面白かったなあ。聴覚と視覚の認識が逆転してしまう。音楽はジェネシストニー・バンクスとマイケル・ラザフォード担当してるそうな。「早春」ではCANを使ってたよねえ。凄まじい「シャウト」っぷりを経て、さすがに後半は耳をいたわりたくなった。。。


そして19日月曜日。瀬田なつき監督の「5 windowsは4度目の鑑賞。最初の横浜黄金町、次は吉祥寺、それから渋谷、そして再び吉祥寺。
その1:「漂流する映画館 〜 5 windows」(2011年10月7日)
その2:「5 windows 吉祥寺remix」(2012年7月9日)
その3:「川映画・橋映画〜白夜と5windows」(2012年11月17日)
再編集され交差具合が変わったことで、「あの瞬間」が普遍的になっていた。
続いて「5 windows mountain mouth」よかったー!黄金町からのがあってこそもあるけど、映像の佇まいにぐっときた。ふたりの存在感、川と橋と緑と道が織りなす山口(mountain mouth)の街、音楽。あれから二年後を感じた。なんといっても中村ゆりかちゃん!ついさっき見たあどけない少女が凛とした女性になっていてビックリ(親戚のおばさん気分デスよ)

二年後を感じたというのは、染谷くん目当ても多かろうな超満員の会場からも。最初の黄金町散策を思い出しつつ、みーまー公開時の「せたのまつり」、あれも染谷くんが登場したイベントだったけど小さなアップリンクだったのにね。しかも2011年1月、震災前なんだな…。
「5 windows mountain mouth」を見て、あの川沿いをあの街を歩きたくなった。山口市の中央部を流れる、一の坂川沿いみたい。とても素敵だったなあ。そういえば今YCAM行きたいんだよねえ。もう少し会期長かったらなあ。。。


染谷将太監督・脚本・主演「シミラーバットディファレント」は甘酸っぱかった。「こういう絵が撮りたい!」という気概とささやかさ。音の存在感もよい。レンジフードを回す音やトースト食べる音。友達と騒いでるときに不意にやってくるしじま。生活の中で流れて行く些細な瞬間をどう捕まえるか。つくりがお行儀よいけれど、若手映画監督にありがちなガチガチさがないところがよかったです。平熱でクリアなところにテン年代の映画を感じた。


そして、クロージング作品のウイズネイルと僕」、35mmフィルム版で。1969年が舞台のイギリス映画だけど、どんよりした空気を染み込んだざらついた画質と漂う匂いを封じ込ませた音は、10代はじめのころ頭に刻まれた、80年代後半のロンドンという背伸びして覗いた憧れの世界だった。今回初めて見たけれど、若い頃に見たらどう思っただろうか。
日本では1991年にここで期間限定公開されたのみという経緯もあれど、これをクロージングにするバウスの心意気とプライドと審美眼に痺れた。
ひとつの時代というものはこうやって唐突に終わってしまうのだ。



私は爆音映画祭のときに行く程度であったし、日常にある映画館ではなかった。けれど、爆音映画祭によって「その街に出向いて映画館で映画を観ることの楽しさと発見」を改めて気づかされた。爆音映画祭は作品の選択にしろ運営にしろ、ビジネスではなく映画への愛情だけで動いているなあってつくづく思うし、今こんな「気づき」を与えてくれる映画館がどれほどあるだろうか?
駅から続くアーケード商店街をずっとずっと歩いた先の、閑静な住宅街との境目の、吉祥寺という街に生きる映画館。
閉館し建物は無くなってしまっても、ここで与え続けた目に見えずお金に換算出来ないものは無くならないし、改めて形になれば嬉しい。


現在署名が行なわれています。バウスシアターという「いち映画館」に限らず、あらゆる問題に繋がっている事例だと思うのです。
→ 「Baus on Baus〜吉祥寺バウスシアター再生へ向けて