「TIME ACID NO CRY AIR」再現ライブ / club que 2DAYS


当日の朝、なにげなく辿った本棚からピロッとでてきてビックリした。97年11月7日渋谷クワトロ。ということはまさかレコ発?タイミング良過ぎ!セットリスト貰うことって普段しないのに、この日はなんでもらったんだろうか。

97年にリリースされた当時、一聴して「dipが変わってしまった・・・!」とショックを受けた感覚を今でもしっかり覚えている。今思えばつくづく子供っぽい気持ちなんだけど。これまでの靄がかった英国NWなサウンドが、妙にクリアでポップで、普通になっちゃったなと思ってしまった。裏ジャケのエフェクターに貼られた「pavement」ってシールに何故?とか、pavementを言及しているのもよくわからなかった。ヘロヘロ抜けてる乾いた音ではないし、、、。今思えばスティーヴ・マルクマスの「はぐらかし屋で捻くれ者」なトコが似てた(あっ、すみません)。※ここで怒らずに、出来れば以下本編を続けて読んでください……※


そんな案配でこのアルバムを青春の中で聴いたでもなく、当時ライブに行きまくったわけでもなく、実のところ思い入れがさほど強くない私なのだけども、wireのあの曲(元ネタ)をSEに始まってから、ずっとシンガロング状態で驚いた!わたし、唄えるよ・・・・!なんだかんだで身に沁みているのだなあ。

ステージ上もサポートギターの中井さんのおかげでかなりくだけた雰囲気になり、場内があったかく和やかで「待ってました!」って空気がいっぱいで楽しかった!yo la tengoとかのライブっぽかったなー。リラックスした喋りをしながら、演奏始まれば一気に怒濤の轟音が渦巻いてスペシャルで。時折ナガタさんが「このアルバムは平塚のスタジオで録って〜」と話してくれるのも嬉しいし、いい感じ。


dipの楽曲の中でも特に好きな「time acid no cry air 6c」は出だしがズレて哀しかったけど、泣きそうになりながら胸をぎゅっとして聴いていた。最後のマイクから外れた状態で「たましいぬかれる」ところがもう、ほんとに、震えてどうしようもなかった。
ヒNAZIS」ではTHE NOVEMBERSの小林さんがゲストで。彼のひょろっと儚げだけど芯のある佇まいがこの曲と良くあっていた。彼の真摯な面は今のdipに逆に影響を与えたと思っています。

この後の「tremolo」が凄かった。青くクリアでどこまでも深く広がって行く音は底を知らない。こんなに美しい音が存在するのだ。「ライブで初めて演った」とぼそっといっていたけれど、この楽曲の持つ奥行きは「今」だからこそ、これほどの完成度でライブ演奏出来たのではないだろうか。今回の企画が無ければ「発見」出来なかったし、1st2ndともneue weltとも地続きなことに驚かさせる。今後のライブでも披露してほしいです!!!

sasa says」はツインギターのおかげで解放された感のあるヤマジさんのギターはぎゅんぎゅん走ってて、「9souls」とは異なる前のめりな音合いに乗っかって。そんな祭りの後の静けさで奏でられる「ether」はヤマジさんとベラさん*1の二人で。この遠い記憶のような音も「今」だから表現出来たのではないだろうか。ヤマソロで聴きたいな。


そして当然アンコール!イントロでまだなんて曲かわからない状態でぶわーって全身が逆立って、「あーーこ、これはーーー!」って「how you satisfy me」!!!大好きな大好きなspectrumのこの曲を聴くことが出来るなんて!!!すっごくカッコ良くて分厚いトリプルギター(!)の波に号泣。。。今度は細海魚さんの鍵盤付きで是非是非お願いします・・・・!(切実)そういえば入場時にspacemen3のTシャツ着ている人がいて「いいなー」ってのとdipでそういう人初めて見たから嬉しかったんだった。彼もきっと盛り上がってたことだろうな。
それから「t.v.eye」!時折演るこの曲だけど、今日はメンツの多さも手伝ってトンデモナク狂ってた。ヤマジさんの咆哮は遂にはスタンドからマイク外してギターに触れずの瞬間まで…!そのうえ、サビを幾度も繰り返してナカイさんやベラさんにスポットあてたり、ああこのまま永遠にこの時が続けばいいのに・・・。こういう盛り上げ方も昨今ヤマジさんがメジャーな舞台に立って得た部分じゃないのかしら。

もう一回アンコール!「もうやる曲ないよ」と言いながら「じゃあ何がいい?」と客に尋ねる。こういうとき声を挙げられないチキンな自分を責めてしまう、ああっバカっ! だから声を挙げてくれた人、ありがとう。私は「Shady Lane」を聴きたかったけど、このときの場内の雰囲気からして合わないよな。
で、鉄板「sludge」を3人で締め。ブチッと弦を切って今夜はオシマイ、ああ。。。私はこの3人のdipがつくり出す音がほんとうに大好きです。


ずっと「pavementのどこに影響されたんだろう」って思ってた。さっきも書いたけど音には全然そんなこと感じない。それは今日改めて思った。だけど。音楽へ向かう姿勢そのものに影響されたのかなと思った。pavementの飄々として自由な佇まい。当時はチョット意訳した影響を受けた気がしますが、今は音そのものに落とし込んでいるように思えるのです。「ロックとはなんだ?」という誰もがどこかでぶつかる命題に対して、風穴を開けてくれたのではないだろか(と書くとアツくて一方的でヤな感じですね、すみません)。
pavementのCDをナガタさんがヤマジさんにプレゼントしたことがキッカケなのだよね。それって、なんて素敵なことなんだろか!


SASAさんの娘さんの話(五十嵐氏目当てで行ったUKPフェスでdipを知り、アルバム聴いたら「お父さんの名前が!」)なんて長年続けてきたからこそだ。そして私がとても感激し誇りに思うのは、今日のこのライブに郷愁や懐古が無かったことだ。
ボーカル・ギター・ベース・ドラムのそれぞれが今の確かな演奏力とチームワークによって、「再現」ではなく「現在進行形」になっていたし、時を経たからこその深みのある表現が生まれ、キレキレな鋭さも人を近づかせないのではなく、刃を磨いていわば3人で向き合い殺陣のように美しい所作を携えたようなところがある。

これでまた、これからの新しい世界を踏むことが出来ると確信した2日間だった。
なにしろこの3人がこうやってqueにget backするとはナア。HMVによるこの企画にまさかdipが「魂抜かれる」で起用されるとは……。バックルームにいる当時の私に教えてあげたい。タイミングとしてとても良かった。dipの3人、ナカイさん、ベラさん、尽力されたスタッフの皆様、ありがとうございました!
今のdipがつくりだす音がいちばん、カッコイイ。

物販のCDR、「Iciclemen」がNouvelle Vagueなアレンジになってて(と勝手に思ってる)、ビックリ!素敵!

*1:ベラさんがギター弾くと、ソフトバレエの一時期のライブ思い出して目頭が・・・