怪獣の教え

横浜赤レンガ倉庫ホールにて、豊田利晃監督による初舞台作品。窪塚洋介・渋川清彦・太田莉菜の3人舞台で、音楽はTWIN TAIL!ということで速攻でチケを取ったのでした。TWIN TAILの今回のメンバーはドラムに当然の中村達也、ギターはヤマジカズヒデ、新たにsaxで青木ケイタ。勝井祐二はスケジュールが合わず不参加、しかしサウンドアドバイザーに堀江博久!ギャー!ヤマジさんと堀江さんが一緒に仕事するなんて!

「演劇+音楽+映画」という冠が付くこの舞台。鑑賞したのは初日だったのでいったいどんな舞台なんだ?と緊張感と期待が入り混じり、その上慣れない横浜+観客は恐らく窪塚ファンメインつーアウェイ感バリバリでビビっていたところ、半円状のステージ脇の最前列且つヤマジさん側の席で驚愕歓喜!ローチケのシステムはdipファンであることを嗅ぎ分けてくれたのか?(ちなみに履歴はありませんヨ)と謎でイッパイ&アリガトウ。

最近日本の映画界では「映画」と「舞台」の境界線を超えた取り組みが活発ですが、映像と音楽の共存を図ってきた豊田監督のこれまでの活動を踏まえた上での「挑戦」であり、新しいものを生み出そうとする強い意志を感じました。

TWIN TAILの演奏、カッコヨカッタなー。演技に合わせて演奏するのはとても難しいのに、スリリングでパワフルで、叙情的な繊細さに色気も加わって、この3人だからこその音が鳴っていました。BGMにもならず台詞もちゃんと聞こえるバランスは、音響をzAkさんが担当だからこそでありましょうか。ギターの音色もとても美しかった。ヤマジファンとしては、劇中も「ヤマジギターの音色」が鳴っていることに感激したのでした……。

さて。映画監督の初舞台作品として気になる点があるのは否めず。PA卓で映像操作を行なう監督の視界だけで切り取られているようで、舞台を全面に使う立体感が薄かった。これは座席のせいもあるかもですが…。映像は基本背景使いで説明的だったのが勿体無くて、舞台上の現実(実体)とスクリーン上の現実(妄想や夢や記憶)が重なったり入れ替わったりとか、バンドの生演奏もせっかくなので見せ方があったのではないかなあとか、「演劇+音楽+映画」を謳うならばもっと効果的に遊んでくれると面白いのにな、セットももうチョットなんとかなると良かったなあ・・・とド素人がエラそうにすみません。
豊田監督の人物造形は、個人的には頑なで類型的な危うさを感じてしまうところはあるけれど、舞台という生々しく蠢き変化する形態は、映画よりも合っているかもしれません。鑑賞した初日公演は多分まだ硬さがあったハズで、恐らく回を進めるごとに変化していったことでしょう。「音楽のライブ感に舞台のライブ感を加味した」映画は同じ上映がひとつもない作品として、映画館というハコビジネスに縛られることなく、映画興行に対しても新たな提示になると思いました。この試みを出来る監督は他にもいるかもしれませんが、この役者陣にこのバンドメンバーという高い水準とセンスは豊田監督にしか出来ないもの。企画したプロデューサーさんはスゴイなあ。今後更に展開していって欲しいです!「夢を見続け世界を変える」ってことは、天作の行為のようなものだけじゃなくってこういうことだと思うのです。