鑑賞記録簿

この数ヶ月見た展示の中からいくつかつらつら記録として。

「建築家 フランク・ゲーリー展 “I Have an Idea”」 21_21 DESIGN SIGHT  10月17日。ひらめきが思考になり建築物として具現化されていく過程が見て取れて、とても面白かった。建築家の仕事に関する展示はどう構成するかが問われるけれど、ディレクションが見事で、完成した建築物そのものを紹介するのではなく、如何に生み出されるかを語るところが、昨今の揶揄への投げかけに思えた。頭に浮かんだ奇想天外な造形を現実に可能にした”テクノロジー”の凄さを知らしめる展示でもあるけれど、国土の狭い日本においてはああいった奇抜な建築物は持て余すと個人的には思っている。だからBIMは維持管理にもっと活用されると良いよねえ・・・。
http://www.2121designsight.jp/program/frank_gehry/


毛利悠子展 感覚の観測《I/O ─ ある作曲家の部屋》の場合  10月24日。エレガントでファニーでとても素敵だった。彼女の作品は見ているだけでにこにこしてしまう。”これまで美術館での保存や再現が難しいとされてきた複雑な機械構造からなる作品を、どのように記録し残していくかという、現代美術の現場が抱える今日的問題について、シェアする目的で開かれたもの”(” ”内は下記公式サイトより引用)で、このような提示の仕方もなるほどなあ&測定データの中にスタッフが食べたものなども記録してあるのもなるほどなあ。と思いながら、ブラウン管消滅により今後どうなるなナム・ジュン・パイクを思い出した。
http://asahiartsquare.org/ja/schedule/post/1387/


「新宿 ―変容する都市の記憶―」コニカミノルタプラザ  11月21日。古い風景写真を見るのは楽しい。新宿駅の周辺写真。タカノの向こうに早川亭の看板!こういうの見ると、ああ私の記憶は幻ではなかったと思えて嬉しい。昭和34年の新宿劇場には"ぼくの伯父さん"の看板。なんだか不思議な気分。モノクロ画面の中を歩く人々の行方を辿り、想像の散策を続けるのだ。
http://www.konicaminolta.jp/plaza/schedule/2015november/shinjuku/?cid=JPZ1511NPR1


川内倫子「Let's sing a song our bodies know」 グッチ新宿3階 11月21日。会場にオロオロ、階段を行ったり来たりでやっと場内に。新作は映像のインスタレーション。天井に設置されたタグチスピーカから流れる音楽は津田貴司(!)によるもので、映像の光や風の揺らぎとの親和性が高く、狭く真っ暗な中なのに澄んだ空気が感じられた。んだけども、ビルがもはや古いだけにエレベータのモーター音が結構響くのね……
http://www.gucci.com/jp//worldofgucci/articles//worldofgucci/articles/new-exhibit-at-shinjuku-fragship-by-rinko-kawauchi


「まちがやって来た−大正・昭和 大田区のまちづくり−」 大田区立郷土資料館  11月22日。大正半ばから”村から町へと劇的変化を果たした”大田区のまちづくりを紹介した展示で、予想を遥かに超えた資料の数々で見応えモリモリ、楽しかったー!鉄道が敷かれ道路が走り周辺に人がやってくる。こうやって街がつくられていくのだな。今尾さんガイドで街散策や「生まれてはみたけれど」ロケ地巡りがあったなんて、参加したかったな。
http://www.city.ota.tokyo.jp/event/event_bunka/tokubetsuten_machigayattekita.html


北山雅和「TYPOGRAFFITI 1 -INVISIBLE-」ギャラリーAL 11月28日。コ−ネリアスのアートワークなどを手掛けるだけに”ハイセンス”なイメージを持っていたけれど、とても真摯で誠実な姿勢が感じられた。クリアで研ぎ澄まされた作品を見ながら、デザインってそもそもコミュニケーションなのだと思ったこの記憶と、今ギャラリーのブログを見て知った、北山さんが綴った文章の、”文字として表される以前の、純粋で、見えない、透明な、意思。透明な、言葉。透明な、タイポグラフィー。”という言葉がリンクした。
http://al-tokyo.blogspot.jp/2015/11/typograffiti-1.html


木藤富士夫「公園遊具写真展」原宿デザインフェスタギャラリー 11月28日。素敵だった……。窓の無い小さな小さなハコの、照明を落としたほの暗い中に浮かびあがる動物たち。ザラッとした和紙のチョイスも良くて、写真集とはまた違う印象がつくりだされていました。写真集、No.1は持っているので、2と3を新たに購入。
http://fujio-panda.com/books.html


「坂 茂―紙の建築と災害支援」三軒茶屋キャロットタワー内生活工房  12月5日。とてもよかった。坂さんは「紙管」を利用した独自の工法で災害支援活動を続けていることで著名な方ですが、何がこの土地に本来ありこの街の人々に求められているかを考えた上での仕事が素晴らしい。展示方法もよい。せたがや文化財団 生活工房は毎回企画と見せ方がすごく良いのだよなあ。行政の管轄でもやり方次第であることが伝わってくる。
http://www.setagaya-ldc.net/program/312/


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今日はちょっとしたことでガッカリが続いたものの、久しぶりにお逢いできた方と再会を喜ぶことが出来てとても嬉しかった。縁ってやっぱりあるのだなあ。