近藤智洋 with ヤマジカズヒデ

4月23日土曜日の19時過ぎ、祐天寺にいた私は「あ、これから三茶、間に合う!」と気付いて一路ライブハウスへ向かい当日券で入ったのでした。heaven's doorでライブというと、何年か前の本庄さんと2人のヤマソロでの「set the controls for the heart of the sun」、たった2人なのに凄まじくのたうち回る音像が忘れられない……なんて思ってたら1曲目がソレだったからビックリした!今回は深く沈んでいく印象で、全く違う曲のよう。これもまた素晴らしい音だった。「killing moon」のカバーの最後に「delay」を感じたり(ペイブメントによるカバーを意識したそう)、「venus in furs」も艶と枯れと深みがあってよかったなあ。そして最後「tomorrow never knows」は打ち込みのリズムにどことなく90年代初頭を思い起こしながら、頭のなかが冷静なのに狂っていてすっごくすっごくカッコヨカッタ。実験を進めていくヤマジさんはギター・サイエンティスト(ってダサいネーミングセンスですみません!)のよう。少し唄う箇所もあったけれど、ギターに専念し選曲や編曲含めて自分の設計図通りにギターだけで演奏するのはある意味ソロに近いかもしれません。とはいえ近藤さんとの仲が効果を生み出したのではと思うほど終始リラックスしていて、2曲目の「ルースターズジョイ・ディヴィジョン」なカバーの後の「どうだったかなあ」と心配する近藤さんのMCを受けて、「カッコ良かとよ」(だったかな)と博多弁で返すようなヤマジさんに驚きつつ笑ってしまった。dipのライブでもこういうシーンが生まれると…いいなあ……。

続いては割礼。これがまた凄まじく、安定感あるのに弛緩している音像に圧倒されっぱなし。ずぶずぶと酩酊しそうなのに覚醒してく感じ。なんだそりゃとお思いでしょうがほんとにそうなんです。宍戸さんの時空間が異なり滲み出る静かなる狂気と同じ質量で対峙する各メンバーも凄いなあ。宍戸さんと唄とギターに山際さんのギターは存在感とともに実に魔術的なんだけど、それだけが立っていないバランスが割礼の良さに思う。「ラブ?」の早い割礼に燃え、「溺れっぱなし」では異次元に吸い込まれてしまった。

急遽見に行ってほんとうによかった。


さて今日、仕事でげんなりさせられて、帰宅後dipのライブ盤「PHARMACY」を聴いていたら「to here never come」の冒頭の唄声にぐっと来て、張り詰めていた気持ちがほどけて、涙がこぼれてしまった。こんな10代のようなこと恥ずかしいんだけど。この曲は映画「空中庭園」のエンディングとしてUAがカバーしていますが、以前雑誌インダビューで「この何年か、デビュー当時のイメージから離れたくていろんなことにチャレンジしたのだけど、この曲を聴いて自分が歌い手として求められることの意味がわかった」というようなことをUAが発言していたのがとても心に残っているのです。