怪獣の教え

9月21から25日に行われた舞台を今更書くのもナーと思いつつ、ダラダラと綴ります。以下、修正が随時入ると思います・・

豊田利晃監督による舞台「怪獣の教え」が六本木ブルーシアターで再演。まずは初日*1 *2。セリフ回しが硬いのが気になったけれど、それは仕方がないかもしれません。それよりも追加されたシーンが素敵だった!ギターの音色は魔法のように美しくて吸い込まれてしまった!そしてスクリーンに映る激しいドラミングの達也さんの姿のカッコよさ!客席を回るGOMAさんのディジュリドゥ!ラスト手前のあのくだりはシビれたナア!!! 前回よりも演出が広がり、全体が固まった印象を受けました。ラストシーンの窪塚洋介の独白は凄みを増していて、圧巻。でもやっぱり、脚本にモヤモヤ感が残ってしまった。

そして千秋楽の朝。宣伝映像が渋谷駅スクランブル交差点の街頭ビジョンに流れ、ヤマジのギターが鳴り響いたことを知る。すぐ想起したのは当然、「ポルノスター」の冒頭、渋谷駅スクランブル交差点を刃の眼差しで歩くジュニアの背後で鳴り響いたヤマジギターだった。胸熱。ああ、実際に体感したかった。。。


千秋楽はアドリブがかなり多く、驚いた。初日の力の入り方に比べてラフな様は面白いけれど緩い印象を受けてしまい、個人的には蛇足かな。。。その半面、ラストシーンに至る急速な熱量の増加が凄かった。ラストの慟哭!頂点への持って行き方が豊田監督らしいのかもしれない。

最後、演奏だけになったときにステージに怪獣が見えた*3。破滅の使者ではない、この先へ続く「道標」のようだった。ようやく、見えた。捉えることが出来た。今回の窪塚さんの叫びとTWINTAILの演奏にはそんな想いを呼び寄せる響きがあった。


中村達也のドラミングには強さと自由があった。これは誰もが惚れるよねえ・・・。ヤマジギターは前回よりも更に豊かに美しく激しく鳴り響き、吸い込まれた。追加シーンのギターのとろんとした美しさと淋しさある優しい音色ったら!あれがあってこそ、ストーリーに深みが出たと思う。そしてもちろん激しい楽曲ではキレまくり、でも頭の芯が冷めてる感じがあって……。
この「最狂」な番長とウラ番長(す、スミマセン。でもホントそうじゃない?)の間で青木ケイタは色気あるサックスに加えてベースも担当、スゴイ存在感。

この「素敵なワルイ三人組」の轟音をまとめあげたZakさんの音響あってこその空間支配力だった!効果音も良かった。演奏と台詞とのバランスをミックスするのはめちゃくちゃ難易度高いだろうけれど、さすがです。そして前回横浜では冒頭のみだったGOMAさんのディジュリドゥが更に効果的に使われたところも素敵だったな。音も”見えない”演者としてそこに存在していた。


さてはて。入口で配布されるチラシが舞台公演がほとんどだったので、ああこれはあくまでも「演劇」のカテゴリなんだなと思った。でも舞台としたらあまりに平面的な演出だし、役者陣の声色や動きは舞台映えに乏しく*4、ライブ演奏に呼応するアクティブな動きが欲しかった(追加シーンはそのあたり考慮された印象あり)。本業である「映画」の持つ魅力を加味し、スクリーンを有効的に使用したとも言い難い。そして強いメッセージは表現として昇華しているとは言い切れず、脚本としての構成力が薄いと思えてしまう。
けれど。「ライブシネマ」としてバンドの生演奏とともに放たれるとひとたび魅力に溢れるのだ!これは体感しないとわからない。


赤い夕陽をバックにハンマーを掲げる天作は「ポルノスター」で桜丘の坂の上で刀を掲げる上條の姿。
白い岩礁の上で慟哭する天作は「モンスターズクラブ」で渋谷スクランブル交差点で叫ぶ良一の姿。
豊田監督はずっと一貫してるなあ。カーテンコールでヤマジさんが鳴らすギターのなか、ステージに向かう豊田監督はキラキラとても素敵な照れた笑顔で*5、監督とヤマジさんとのこの二十年(!)の歳月が培った想いを感じて、泣けてしまった。


今後新たな作品でライブシネマをやるならば、最近の活躍著しい瑛太に出て欲しいなー。あとは森山未來の佇まいと身体能力はどんな刺激を生むかなと興味深いのです。

*1:千秋楽を押さえた後に、会社の福利厚生でチケを取れる(!)ことを知り、初日も見たですよ。やー、こういう作品を福利厚生を使って見るのって複雑……だけど!

*2:横浜は初日だけ見て、しかも最前列のヤマジさんの真ん前の席だったから、今回は真ん中よりちょい前あたりの席で全体像を捉えることが出来ました

*3:初日では、最後の最後にスクリーンに映っていたのがギターを弾くヤマジさんだと思って、怪獣=ヤマジカズヒデ!ってシビレて、豊田監督の想いに感じて、ひとりで勝手に盛り上がっていたのだけど、千秋楽はベースを弾く青木ケイタさんだったから、あれ…?私のバカバカ……

*4:実は千秋楽の前の日にwowowで放送した野田秀樹の「逆鱗」を見てしまい、演出・脚本・演技・・・全てにおいて奥行きと深みがすんばらしくて号泣したのだった。やーもうホント凄くて、テレビで見てこれだけ胸を動かされるのだから、公演を見たならばどうだっただろうか!

*5:ステージ近くの通路脇の席で作中もすぐ横を役者さんが通り抜けたりで、きゃー