新富町から赤坂見附

土曜日。外出は久しぶりに思えちゃう。表参道で珈琲豆を買う。Kさんの焙煎豆が特別販売されている。初めていただいたのはもう10年以上も前だったか。ひたすらシャイなKさんがその後”珈琲だけの”有名店に勤務されたときにはひたすら驚いたものだ。あの店の豆も焙煎しているのだものねえ。
その後地下鉄で移動し新富町写真展。”今はもうない”自家焙煎珈琲店の在りし日の風景がそこにあった。極深く焙煎された珈琲豆の薫りがセピア色に燻された文庫の背表紙が並ぶ壁とともに立ち上がってきて、そのやわらかな光に泣いた。ご主人がネルで抽出するときの体の角度。棚に並んだ器の規則性。40年近い日々の積み重ねによって作り上げられたこの空間。そんな歳月もビルの建替というお題目で一瞬にして壊されてしまうのだ。とはいえ、その後の東京のコーヒーショップにまつわる喧騒を憂うにつけ、これでよかったのかもしれない。どんな味わいも佇まいも、情報として消費されてしまうから。


ギャラリーの近くに元電通本社ビルがあった。竣工1967年、丹下健三による設計。




どことなく香川県庁舎を思い起こす丹下らしいデザイン。住友不動産に売却されたようで周囲一体の再開発待ちなのだろう、空っぽのビルは口をつぐんだままだった。一年中照明が消えることのない、華やかな時代があったことが嘘のよう。


水はないのに橋がある。首都高に掛かる意匠が美しい采女橋の袂を超えて進むと、新橋演舞場と料亭が立ち並ぶあいまに、古い看板建築の家屋が数件あり、その突き当りには小学校があった。成瀬巳喜男の映画に出てきたであろう界隈。雑居ビルの影を歩いていくと、光の柱が見えた。

向かいのビルが反射して映っているそれは現電通本社か。大通りに出る角を見上げれば


おお!カプセルタワー!竣工1972年、黒川紀章による設計。建築的価値はさておき、見た目相当朽ちててこれは……。諸問題を抱えたまま、ほんとにどうなるんだろか。今もバンバン建築される分譲マンション購入者は数十年後のの維持管理をどう考えてんだろーなーと思わずにいられないヨネー。


汐留、新橋、内幸町。この界隈を歩くのはいつぶりだったかな。そのときの風景と変わっていなかった。



虎ノ門経産省の辺りはかつて、真田家の上屋敷があったというけれど標もないのは哀しいね・・・


溜池山王に来たからカヤヌマでリンツァートルテを買って、赤坂見附東急ホテルの2階遊歩道から交差点を見下ろすと、谷底に高架がクロスした様が凄まじい。地下に潜って駅へ。これにて今日の散策は終了。調べると5キロ程度。いつもの半分なのに大層疲れてしまい、体力の低下を痛感。徐々に慣らしていかないとなあ。夜もご飯食べたらすぐ寝てしまった。