「未来よこんにちは」

Bunkamura ル・シネマにて。土曜の1日に時間を得たことで久しぶりに自主的に映画鑑賞を選択し、この作品にした気持ちにしっくり来た。短絡的に強い感情を与えることなく、しなやかで凛とした余韻があとからじわじわくる、ミア=ハンセン・ラブらしい映画だった。
淡々と時間は過ぎていく、流れる川のように。客観的に捉えるカメラがそのまま、「抗わない」という生き方を教えてくれるようだった。日々の営みの中で触れたことが自分の意識とは別の道筋で、土に滲みる水のように心の奥深くに入っていく。そしていつの日か自分を動かす養分となる。
誰かと話したときの何気ない言葉、歩いたときのリズム、聞こえてきたメロディ、眩しくて見上げた太陽の光、頬をなでた風。そういった僅かな形跡がいつかの未来をつくる。
ミア=ハンセン・ラブの作品はいつもそういうことを感じさせてくれる。出来事としてスクリーンに映るそのときの「今」は、過去から流れてきて明日へ続いていく「今」なのだ。