cornelius / mellow waves tour 2017 at Studio Coast

10月25日水曜日、雨の夜。殺風景な駅に降り立ち、”もくもく”の看板が見えると、ああ新木場に来たなーって思う。立ちっぱなしはツライしねえと2階席を押さえたら、真ん中あたりのすこぶる良いトコで落ち着いて見ることが出来て良かった!(でも座席No.がわかりづらく、難民続出してたよ・・・)


アルバムのあの音作りを演奏するだけでも凄まじいのに、あくまでもクールに、でも生々しく蠢き、各パーツがクッキリしつつもクリアに組まれた演奏はスゴイの一言。相当難しいことをしているのに、聴いていて楽しいし、各4人の動きを見るのも楽しい。「見せ方聴かせ方をわかっている」からこそ装いもセンスよくオシャレで、そこにはコミュニケーションがあるってことだなあ。

冒頭は想像の範囲内だったけれど、「The Spell of a Vanishing Loveliness」が素晴らしかった!アルバムではlushのミキちゃんが唄うこの曲を大野由美子さんが歌唱。大野さんの可憐な唄声が楽曲のメロディの良さを更に引き立て、肉付けされ血が通った演奏にぐっと来て、ボーーーッとして、泣きそうになった。うわあああって震えた。アルバムで聴いてたときよりずっとずっと良い曲になってた。曲が終わったとき場内シーーーンとして拍手もなかったのは、みんなが呆然としてたからなのかな。続く「Tone Twilight Zone」への流れも素敵だった。この曲はPV共々洗練されていて、とても穏やかな気持ちになる。

そして「Surfing on Mellow Wave pt 2」、このインストやるとは思わなかった!ライブでやると、現代音楽というのかなんかもスゴイことになってて、小山田くんのライブでこういうの聴くとは!とワナワナし、もんどり打つのか蕩けるのか、口あんぐりで痺れた!ずーっとこのまま聴いてたいと思う音の洪水で、本人たちも相当楽しいんじゃ?ってインプロが続いてたけど「いかん、時間が!」って気づいたのか、いきなり小山田リーダーがブチッと音を止めたのが面白かったし勿体無かったなあ。

そうそう、開演前に同行のY氏が「ミラーボールなんて常設してて、使う人いるの?」というので「いやー、”猫がいなかった”とか唄ってるときに回るんだよ・・・」と笑いながら返したら、「Star Fruits Surf Rider」でホントにキラキラ回ってビックリ&笑った。そんなわかりやすい多幸感演出のあとの「あなたがいるなら」は、ちょっと緩んだ印象で、深みに落ちて浮かんでという空気が薄かった。

アンコール最後の「E」は、超絶リズムを映像と同期しなきゃな制約から開放された、バンド演奏の本来の楽しさに溢れていて、あーいいメンバーだなーってしみじみ楽しかった。


あらきさんのドラムは全空間を使った、まさに心臓部。このリズムの芯を胸に感じるからこそ、小山田くんもギュイーンとギターうねらせたりカッティング出来るし、堀江さんもぴょんぴょん跳ねたり思いっきりカウベル叩き切ったり、大野さんも困難案件であろうベースラインを弾きこなし、ムーグに唄に多彩な演奏を魅せるのだろう。
打ち込みだから可能な音の構成を、人力でやるんだぜ!と挑み完璧なまでに仕上げることは素晴らしい。でも本当にスゴイのは、超絶な演奏力に奢らず、孤高でもなく、あくまでもエンターテイメントであり、キュートなこと。小山田くんがそういう人だからなのだろうな。堀江さんはカッコイイけど天然なオモシロさがあって、あらきさんも大野さんもキリッとしつつ、たおやか。


で。2階で全体像として見たこともあり、気になる点(映像面)があったのも事実。
映像とのシンクロがポイントなのもわかるけれど、その梯子は一旦下ろしてもいいのでは。「POINT」「SENSUOUS 」はポップアートとして成り立っていたけれど、モノクロームの銅版画をモチーフとする今作だと、ちょっと無理がある。映像作家を決めたのは小山田くんとはいえ、なんかこう、表現の齟齬を感じてしまう。個人的にグルビが好きじゃないのもあるけど、特に「未来の人へ」の映像が歌詞を語っているだけなので面白みがなかったなあ。あと「Surfing on Mellow Wave pt 2」は音が素晴らしかっただけに、なんであんな映像なんだろうかと謎でイッパイ。テリー・ライリーやスティーブ・ライヒのジャケを想起したけども。音だけで映像喚起力が高いので、敢えて映像は必要ない気がした。
聴力より視覚のほうが即効性高く情報量の刺激が強いから、全体的にちょっとツラかった。今作のPVはどれもいいなあって思えないのが哀しい。VRって言ってるのもなあ・・・。ついでにツアーグッズもカッコイイって思えなかった。。。ビジュアル面への好みの差はまあ、人間だもの、違いはあるよね・・・。もしかすると作りにくかったかもしれない。
そして、「Point Of View Point」はリマスターしてあげて!と思うほど解像度が旧くて、2001年当時度肝を抜かれたけど、あっという間だなあと思わざるをえない。「Breezin'」も旧く感じるもの。映像って難しいなあ。「Count Five or Six」は元々昭和なモノ満載で今じゃ絶対無理なつくりだし、若い時ならアリだけど、このノリからもう解放してほしい・・・。
映像とセットだとライブレパートリーが固定されてしまうし、場のムードで展開することが出来ないのはちょっと勿体無い。高い演奏能力をシンプルに堪能したいです。


最後に個人的想いを爆発させると、堀江さんのギターの音にああ影響与えたんだよねえとか、大野さんが唄う姿見ると「jesus doesn't want me for a sunbeam」でコーラスしたよあとか、ヤマジさんを思い出さずにいられないイタさなんだけど、ギター弾きまくる小山田くん見てると、ホントにいつか同じステージに立たないかなあと妄想せずにはいられないんですよ・・・