英国音楽と米国音楽の狭間で

3月末に下北”queの上に移転した!”B&Bトークイベントがあった。

遂に!なこの書籍には、たくさんの人たちが紡いでバトンを渡してきた”何かに対する想い”が詰まっている。おうちの何処かに隠れてしまった膨大な量の資料を集め、編集し、まとめあげた野中モモさんとばるぼらさんの仕事には胸がいっぱいになる。更に今回トークショーに「80年代インディー編」として小出亜佐子さんがゲストにだなんて!小出さんといえばすっと頭に浮かぶのは、みっちり手書きで埋め尽くされた記事で、私はそこからたくさんの音楽と想いを教えてもらったものだ。
表舞台に出られることはまずなかった小出さんは、今や遠い遠い時代の、記憶の底に眠るカケラをページを捲るように少しづつ引っ張り出してくださった。お話を伺いながら、何か大切なものに触れるようで、ああ私が触れていいのだろうか触れることなんて出来ないって感じながらも、好きなものに対する熱と気概に満ちていて、想うことがいろいろありすぎて、どうにも言葉にまとめることが出来ない。後から遡って知るデータでは伺いしれない、80年代後半の東京で20歳前後の若者が見聞きし動いた、目に見えない、時の流れに埋もれてしまいそうな、もの。

「喋るのは得意ではないけれど、手紙とか書いて伝えることはしつこいくらいに」というような言葉が私の胸の中に刺さって、永年の想いがはらはらと零れ落ちそうだった。THE JAMに”間に合わなかった”ことが小出さんをライヴ通いに走らせ、アズテック、オレンジジュース・・・好きになった想いを伝えたい!ってアツい気持ちとともに、もういいかなってなる基準もクッキリとあるのが興味深かった。
青学サークル”ベターデイズ”で発行していた【訂正】この拙い感想を読んでくださった野中モモさんよりお知らせいただきました。「Better Daysはサザンオールスターズらを輩出した青山学院大学の軽音サークル」で「『英国音楽』を発行したのはそれとは別の英国音楽愛好会」だそうです。失礼しました。ミニコミ「英国音楽」は、元々は男性が発行人で、NWを通過したクールな装丁は今見ても洗練されることに驚いた。5号で休刊するも、小出さんが引き継ぎ復活。第1号は1984年、最終号である第12号は89年。80年代後半の激動する世界情勢なニュース映像が頭に浮かびながら、当時東京の大学生はUKロックシーンを如何に体感していたのだろう。「英国音楽」の第1号と最終号とで世界観が随分異なるけれど、その辺りの差異と共感はどうなのか。同調圧力を如何に回避し「私の想い」を貫き通してきたのだろうか。小出さんと聞くとどうしてもフリッパな目線が付いてしまうところはあるから、聞き手には小出さんと同年代〜少し上の世代の、音楽知識が広く豊富な方が良かったかなと思うところはある。ただ今回は「ジン」に関してが土台であるから、ね。

私は「英国音楽」には間に合わず、「米国音楽」に素直に没入するにはそういう気分が過ぎてしまったんだよなと思い返す。90年代初頭から積み重ねた紙ものもCDもつらくなって、一気に処分した時期もあった。
記憶って曖昧で更新してしまったりもするし想いは消えてしまったりもする。でも、「私はこれが好きなんだ、サイッコーなんだ!」って想いで綴ったミニコミが世代を超えて語られるってほんとうに素晴らしいことだし、ちいさな想いがたくさんの人の気持ちを生み出し繋がっていくって事実に感動してしまうのだ。