フロリダ・プロジェクト

先月の中旬の土曜日。全くノーマークの作品だったけれど、見よう、とピンと来たのはSNSで見かけた言葉がきっかけだ。褒め称えてるわけでもなく、どういう映画なのか説明しているわけでもないのに、心がゾワゾワして「見たほうがいいよ」と体が伝えているようだった。あらすじなどの情報を入れずに土曜の午後、映画館へ向かった。
見終わって、ヒューマントラストの長い長いエレベーターから見下ろすと、塀に囲まれた宮下公園はもう何にもない更地だった。外へ着くと意外に涼しくて、でもなんか夏で、交差点だから人がたくさん行き交っていて、入り口の壁に寄りかかって空を見上げたらヴアアアア!となって、人混みじゃないとこに行きたくなって、真向かいの駅出入り口を降りて、一番近い改札から田園都市線乗って二子玉川へ向かって、多摩川で暫くの間ぼーっとした。二子玉川駅周辺のマジックタウン度も相当なわけだけど、渋谷からすぐ行ける場所として衝動的に浮かんだのがこの河原だったのだ。

夕方の光で刻々と表情を変える空と鏡のような川を見ているだけでよかった。


ショーン・ベイカー監督の、人としてのまなざしの”高さ”と、映画監督としての”作為性”がよかった。カラフルな色彩に満ちた映像の中でさらりと蒔かれたものがきちんと繋がっていくことも、これは映画だけれどファンタジーではない、現実と地続きの、今そこにある現状であることを思わせた。わかりやすくやわらかく提示するのではなく、こちらの想像力が埋めるところを残してあることこそ、監督の誠実さや観客への信頼の証なのだろう。あの、まさにマジカルなあのラスト!背筋がゾクゾクっとして目を見開いたあの感覚が今も皮膚に残っている。もちろんそれに至るまでの流れがあってこその。
こういう題材の映画を見ながら仕事のことを思い出さないくらいには、回復したなって思った。