店と店主と音楽と。

この数年ボコボコとオープンしているコーヒーショップの店員はみなフレンドリーに話しかけてくるし、常連客と思しき人と話し込んでいるものの、その会話は大抵最近どう?な感じである。そして私がこういった店で気になるのは、インテリアやBGMに「店主が好きなもの」感がないことだ。店名ロゴは気合入ってるんだけどね。
また、店舗デザインはどこかっぽいオシャレな雰囲気だけど、店内に置かれたものや音楽がチグハグで、店主の服装と店のファザードが結びつかないこともある。
そういえば、私が好きなギターポップソングが掛かってて”あら!”と思った店があった。再訪すると今日も彼らの曲が掛かってて”ん?”と思い、もう一度行ったときもおんなじで、これは音楽が好きというよりも空間の埋め草なのか・・・?と考えてしまうこともあったりする。店主の人柄は素敵だし、美味しいし、落ち着くんだけど、ちょっとナゾ。あ、無印のBGM集ループの飲食店もあったなー・・・。
なんて大きなお世話なんですけども。

とまあ、そんなふうに思ってしまうのは、90年代に若かりし日を過ごしたものとしては「音楽・文学・美術などに特別の想いを持つことが日常」の人が始めるのがカフェという印象があるからだ。それも年寄りの昔話で、今は違うのだろう。カフェはその街で暮らし働く人たちの止まり木的な場所で、店主と常連客の他愛ないお喋りの場=コミュニティスペースとして考えると、昔ながらの喫茶店に回帰したのかもしれない。


そんなことを思ってたら、久々に行ったとある店。以前の店名の頃から行っていたものの、資本が入ってすっかり大人気になった店の片隅でお茶を飲みながらぼーっとしてたら、さっきからチルアウトな音楽が掛かってることに気づいてハッとした。店内満席でお喋りや撮影に興じる若い子たちには恐らく聴こえていないのに、静かな主張を感じて、ああそういえば以前から音楽セレクト良かったことを思い出した。当時話題になってきたアルゼンチン音楽とか掛かってたなあなんて。
会計時に「店内の音楽はどなたかのセレクトなんですか」と尋ねると、パアアっとはにかんだ笑顔で「オーナーやスタッフがプレイリストを都度作っていて、今は2018年夏ミックスなんです」との回答に、嬉しくなった。

坂本龍一 お気に入りのレストランの音楽があまりにも酷いため選曲を引き受ける
http://amass.jp/108203/

坂本龍一ともなると「私に選曲させてくれ」なんて提案出来るんだなーと、ちょっとおもしろかった。