久しぶりの店

昨日思い立って、とある街の洋菓子店へ出かけた。今年いただいた年賀状に「入院のため暫く休業いたします。秋頃に再開予定です」と書いてあり、ずっと心配していたからだ。住宅街の坂道を降りていくと、灯りの点いた店があった。営業されている!ドキドキしながら店内へ入り「お久しぶりです」と挨拶すると「わあ、お久しぶりです」と笑顔を迎えてくださった。
「ずっと気になっていて、どうされたかな…と伺ってみたんです」とお伝えすると、「土曜日だけ営業することにしてみたんです」。ずいぶん痩せられたけれど優しい口調はそのままに語られた、体調を崩してから今に至る話はまさに奇跡的な回復といえるものだった。品数はごく僅かになったけれど、以前と変わらず、丁寧に手を掛けて作られているのがよくわかった。「まだケーキはいろいろ作れないけれど、ルセットはずっと読んでいて、◯◯(私が好きなケーキ)の箇所を見ると、あなたのことを思い出すんですよ」と仰ってくださった。なんてお優しいのだろう。おひとりでずっと根詰めて製作されているだけに、ご無理をされないでくださいねと言うしか出来ないけれど、こうやってまた営業をすることが出来て本当に良かった。「出来る範囲でいろいろ作っていきたいんです」こちらのお店にはまだ他の街にあるころから、20年以上時折伺ってきた。今日も幾つか買い求め、「これからも楽しみに覗いますね」と店を出た。このあとはそのまま街をいくつも辿ったけれど、いつもより足は軽やか、目に映る風景はぐっとくるものばかりで、結構な距離を歩いていた。