"Labo4" - oneman show

11月30日金曜日。いつも以上に長い長い(エンドレス)感想文。まとめると、サイコー!ってことです。
以下は個人的記録ゆえ。

前夜はうちでUKP1stを聴いた。一番思い入れが強く一番聴いているし、ドレから聞けばいいのかと問われたらまずコレと思っている。性急な曲もメロウな曲もポップでサイケデリックで、カバー曲センスも見事。dipの良さが詰まっている。稀有やるかなーないだろーなーと、思い続けて何年だろう。
ワンマンだと熱気がやっぱり違うと、ネット上を見ても思う。バタバタした仕事をなんとかすり抜け会社を出るときに心の中で雄叫び上げてバンザイをしたものの、移動の電車内では妙に緊張してしまい、フガフガしてた。dipのライブ前はいつもなんでか緊張する。楽しみがマックスになるからだろうか、自分の心の度合いは謎である。
19時開場で19時半開演と、会社員に優しい時間帯。ちょっと余裕あるから夕ご飯食べに遠回りしようかな思ったけど、緊張度合い故いつもより早めに会場に行くともう限定ボックスの整理券配ってて、慌てて無事頂戴する。


開演は押して結局20時近かったかもしれない。この1年はヤマソロのリラックスした雰囲気が印象的だっただけに、dip、しかもワンマンとなると独特の張り詰めた空気が立ち込める。MCは無かった。
1曲目はhollow gallowそして「sludge」と序盤には珍しい曲で始まり3曲目でまさかの「pink fluid」わーー!この曲聴くたびに泣いてしまう。途中の転調するとこでぐっときて、「ねじれーた」でぐわっとなって、最後の「るるーるるる」で涙腺崩壊……。久々の演奏で驚いたのは、これまではふにゃふにゃぐんにゃりな印象だったのが、ガシッとしてたことだ。サイケデリックの意味が変わったとでもいうような。
泣いてしまう、で共通してるのが「the place to go」で、イントロなしで始まるヤマジさんの声が切なすぎて、いきなり涙してしまう。胸を締め付けられてどんどん落ちていく。ドラムのドドッと入る様に更に泣く。呆然としてしまう。どうしてこんなに琴線に触れるのか自分でもわからない。そんな状態のところに「now gotta the sun」が続くから、殺す気か!切なさで言えばこの曲が代表格かなあ。切なで刹那、沈んでいく夕陽のなかへただただ突き進むしかない、カラカラな果て。でも今日の演奏では豊田監督の『PLANETIST』で幾度も見た、小笠原の夕陽が沈む瞬間に浮かぶ緑の光線を思い出した。ロメールの映画でも語られた、その出現は奇跡であり、見た人は幸せを掴めるのだという”緑の光線” かのような、この先の幸福を信じられる奇跡が滲む演奏には感傷は無かった。
そして続く13階段への荒野」にはこれまでのヒリヒリ乾いた痛みが存在していなかった。『痛みだけが新しい世界を写し出すだろう』ーーー”だろう”という仮定が、”写し出した”という実感になり、今は写し出した「新しい世界」へと次々に進んでいたのだ。
一番ビックリしたのは「稀有」!!!遂に!イントロのドドッてとこで目を見開いて息が止まった。しかし耳に馴染む音とは異なる、重いスピードと低いトーンだった。2番になるとヤマジさんは声を高くした。そうか、今やるとこうなるんだ。dip は昔の曲をやっても今と並列で鳴るけれど、稀有に封じ込まれた若き青さは即座に掴めないほど、純度が高かったのだと気付かされた。そんな違いが嬉しかった。
ここで前半終了、休憩へ。後半は「Krauteater」からで、「after laud」以降の、”クリーンになった”状態でつくられた楽曲で纏められていて、音の感触に統一感があると気づいた。今日の選曲は合わせ鏡感がある。「Hasty」はいつもはJロック感を強く感じてしまうけれど、今日は締まった落ち着きが感じられた。続く「Plantation」”3人で”転がってく感じがすごくして、楽しい!「Break on through」のジャーッと空間を切り倒すギター、神がかってた。
アンコールは「dear prudence」、今日の演奏は”新宿”リキッドルームの中にいた。サイケデリックでトランシーなんて安い形容は全く思い浮かばない音像。この1曲でハケて、場内は「アンコール」の歓声が続くなか、「オーディエンスはもっと騒ぐんだ!」という声が聞こえてドキッとした。歓声はまとまり強くなり、再び登場してくれた!
「もう唄わないよ」と鋭い切っ先が放つのは、Junglesの「Break Bottle」!オオッ!聴きたかったの!素早さと重さを併せ持つ、凄まじい殺陣のような音。最後の最後の予定外でこの演奏っぷり!カッコ良すぎ!


かなりな轟音爆音のはずなのに、音がきれいだった。どのパーツもクリアに響いていた。前回sugarplantとのときは、ヤマジさんの咆哮多めがまるで間を持たせるかのようだったけれど、今日はそんなことは必要なく、3人のバランスが取れていた。ナガタさんのベースはハネたりドライブしてくよな派手に引っ張るところはないのに、時に口付さむように引く様に妙に惹きつけられる。ナカニシさんはアツくなることなく淡々と、でも憑依するかのように熱を帯びるドラムがいい。
そしてゲストの細海魚さんのキーボードはヤマジさんのギターの音色と双生児の如く同調しながら増幅し、彩りを加えていた。途中不在になって、いつの間にハケた?!と謎だったんだけど、アンコールで再びヤマジさんが出てきたとき、「出てきていいよ」とボソッと言ったら、キーボードの下からにょいッと顔を出されたのに爆笑してしまった。さかなさん、いいひとすぎる・・・


終わった瞬間、まわりで「かっこいい・・・」と思わず声が上がって、コクコクコクと頷いて「ほんとかっこよかったですね〜」と笑顔を見合わせあって、ああこうやって「dipが好き」というただひとつの感情でここに集まった見知らぬ人たちと幸せを共有し合うって、素敵なことだ。
稀有が聴けたことも嬉しかったけど、新曲群がいちばんかっこいいし今の彼らが奏でてる音がした。ステージからの音に痺れながらフロアは多幸感に満ちていて、たくさんの好きだーって気持ちが溢れてて、とても嬉しかった。日常が負の気持ちに押しつぶされそうだけど、やっぱり好きなものを存分に浴びるのって大切だなあ。


さてこの日発売されたボックス。新曲デモCD(CDRじゃない!)・バッジ・トートバックが入ってナンバリングまで!限定といってもCDRではなくて、こういうアイテムが!遂に!マーチャンダイズ大事。

こんな箱に入ってて(バーコードを模したデザインが良い〜)

こんなシールで留められて(かわいい)

これがトートバック。黒地に銀のロゴ、バンドアイテムぽくてくてすこぶる良い!生地もしっかりしてるし、中はお財布入るくらいのポケット付きで使いやすいんですよ、奥さま(テレビショッピング風)

でも「Search & Destroy」だよ。

なんとビックリ、A STORE ROBOT製!どうして今ココで!(A STORE ROBOT30周年記念のコメントをヤマジさんがしてるのに気づきました)随分昔、90年代終わりだろうか。渋谷からいつものように歩いてて原宿の外れにあるショップへふらりと入ったら、dipが掛かっててびっくりした記憶は、私の夢か妄想かよくわからないってことをぶわっと思い出したのだった。次の日の土曜はコレ持ってお散歩しましたよ◎


末日とはいえ11月だからかまだ年の瀬感は無かったけど、この日で今年のdipラストなんだよねえ。これまでにないなにかを感じることの多かった今年、ここでリセットじゃなくて、新しい道をどんどん進んでいくってことを痛感させてくれたライブだった。
来年は音源や映像でライブをもっとたくさんの人に見てもらえる機会があればいいな。