PLANETIST

有楽町。マリオンがルミネって未だに把握できない。スムーズに繋がらないエスカレーターを登りきるとキラキラした宇宙に放り込まれ、ワクワクしながら素晴らしき映画に出会える空間があった。日劇はいまはもうない。

久々の朝日ホールでフィルメックス、何度も来ているこの舞台でヤマジさんを見る日が来るなんて。スクリーンいっぱいにギター弾く姿を「映画として」見る日が来るなんて*1。夕焼けと海に包まれながら生まれるギターの音色はライブハウスとは違う響き、美しかった。
11月25日。先日ロードショー公開された最新作を見たばかりの豊田利晃監督最新作が、フィルメックスで上映された。「青い春」「蘇りの血」と続き今回が三度目。スタッフにファンがいるのかな。かねてから制作が話題に上がっていたものの、概要に驚いた。

東洋のガラパゴスと呼ばれる小笠原諸島で海のターザンと呼ばれる宮川典継。宮川の導きで小笠原の自然を体験する俳優やミュージシャンたちの歓喜の瞬間を映画監督の豊田利晃が5年間にわたって記録したドキュメンタリーフィルム。
https://filmex.jp/2018/program/specialscreenings/ss10

大自然ドキュメンタリーは苦手だし、「グランブルー」も苦手なので、豊田監督作で無ければ見なかっただろうなあ。166分と長尺(しかも朝日ホールで……)だけど退屈にならなかったのは、後半でヤマジさんが登場すると意識していたからだろう。
上映前に舞台挨拶、ヤマジさんがいることが不思議。。。コメントしてポーズ取っていろんな向きでマスコミ用撮影、ああ映画って興行だなあ。



豊田監督の作品はどれも重いタイム感なのが不思議で、ロック好きという面が強いのに何故だろうと思っていたけれど、「しょったん」を見たこともあって、思考のリズムが音楽ではなく、将棋で培われたからではないかと腑に落ちた。将棋がわからない私が言うのもなんだけど。ジリジリジリジリ経過していく時間の中に宿る、ちいさななにかが映っている。
落ち行く夕陽が執拗に幾度も描かれて、現地での豊田監督の心の震えが伝わってくる。緑の光線、一生分見た。緑の光線といえばロメールだけど。


幕開けがコーネリアス「Surfing on Mind Wave pt 2」 なことに驚いた!音楽 コーネリアスってこういう使い方かあ。 PVが何故にサーフィン視点なんだろうと思ってたけど、ここに繋がるとは。zAkさんー大野由美子さんという流れかしら。前にも書いたけど、ヤマジさんと小山田くんが同じ土壌で語られることに震える……。

宮川さんと共に「5人の男たち」が登場、各人のひととなりが見事に反映されていた。
GOMAさんの、イルカとコミュニケーションを取ったあとの吐露から伺える誠実さ
窪塚洋介さんの、ヴァイブス(!)に心酔していく姿と息子(しょったんの子供時代役の子!)との交流に伺える、素直さ
・渋川清彦さんの、船の上でかもめを見上げながらの「おーい!ジョナサーン!」に爆笑。さっきまでの謂わば”スピ”っぽくなってきそうなところにインターミッション的役割さすが
・達也さんの、アウトドアな格好もオシャレでファッショニスタな姿に惚れ……。でもひとたびドラムに向かえば鬼になる。「ヤマジくんここに来れるのかなあ」に笑う
・そして。ヤマジさん!夕暮れの海の間際で奏でるのは、小笠原に古くから伝わる唄。ライブハウス以外で、野外で、海で!、ヤマジさんのギター初めて聴いたなあ。もっとずっと聴いていたかった。トーク部分は無し。えー、GOMAさんの見て「ヤマジさんもこんなふうに紹介されるの…?」とドキドキしてたのに!(笑)ちなみに作中、ヤマソロ曲が起用されてました。


彼らを通して宮川典継さんは何者なのかと想像させながら、小笠原の複雑な歴史が紐解かれ、そこに宮川さんが如何に関わってきたかが語られる。豊田監督は小笠原と宮川さんに心底惚れているんだろうなって想いが危うげなほどにギューギュー詰まってた。この後に「しょったん」を撮影・完成させてから、本作の編集をしたってことに驚き・・・。想いの強さゆえ尺がかなり長いので、一般公開時にはもう少し編集するのかな。でもあの時間の流れが、らしいのかな。


いろんなこと思い出して繋がったり、そうだったなあとか、まさかなあとか、映画を見ることは自分が行こうとも見ようともしていなかった場所へ連れて行ってくれる。いつかふとこの映画を思い出すとき、私は何をしているのだろう。

*1:「クローズ」でライブシーンあったけども