移動と音楽

外でヘッドフォンをして音楽を聴くことは無い。若いときは「ウォークマンやCDウォークマンとイヤホン」がお供だったけれど、いつからか耳を塞いで移動することに不安を抱くようになった。降り過ごしたりアナウンスが聞き取れないほど音楽に気を奪われてしまうし、耳のなかで直に脳に響く音が怖くもなった。それに日常生活に於いて長時間(30分としますか)ノンストップで乗り物移動することは無く、短時間複数回の乗り換えが主だと落ち着いて聴くのは難しいことが一番の要因だ。そんなわけでiPodも持たず、携帯〜スマホiPhoneになった今もその状態である。


今日出掛ける街はいつもより長く電車に乗る距離で、ふと、外に持ち出そうかなと考えた。今更ながらどうやってiPhoneで聴くことが出来るのかを調べて、格納して、Y氏のブルートゥースヘッドホンを鞄に入れ、電車に乗ってから耳に被せて、再生した。
不思議だった。目はいつものように周囲の景色を捉えているのに、耳だけは私のなかにいた。ああこういうふうに音が聴こえるんだったなあ。これだけで公共空間が私の空間になった。ドラムのアタックが電柱とリンクする、足元の振動がベースラインと絡み合う、流れる動きとギターが重なり合う。そういえばケミカル・ブラザーズのPVにこんなのあったよね。サンプリングの朗読が車内アナウンス英語版と混ざったのも面白かったし、帰りの混雑した車内でちょうど激しい曲が掛かったから意識を現実から遠退けることが出来た。何しろ電車がガタンッと揺れても音が飛ばない!
これで気が大きくなって、外で聴くことが常になる、とは全く思わないけれど。


そういえば小山田くんが数年前に車の免許を取って、運転しながら聴く用のプレイリストを作ったり、若い頃聴いてた曲を改めて聴いて良さを再確認した話があったっけ。車だと確かに聴きたくなるかもだけど、選曲考えちゃうよねえ。ついついアクセル踏んじゃう曲や眠くなる曲は選べないし、うっかり「新ベリッシマ」なんて聴いちゃったら*1、ねえ。高校のころなんて自転車通学用にカセットテープ作ってたけど、今自転車乗りながら聴くなんてこと、恐ろしくて出来ない・・・。

*1:「遠い天国までドライブしようよ」