ヤマソロ oneman at BLAH BLAH BLAH

with Takeshi Nishimoto [ gtr.] + Makiko Tanaka [ painting ]
会場のBLAH BLAH BLAHは初めて行くライブハウス。最寄りは西早稲田!こんなところに……。大通りから1本入って住宅が並ぶ道なりはゆるやかに下っていて、このまま神田川へと流れるのだろう。歩きたい欲がくすぐられるけど、今夜はテナントビル地下1階へ。
1曲めはjoy division「atmosphere」!聴きたかったのー!ヤマジさんが歌うと遠い歳月を思い返し消えるような切なさが漂うのだなあ。続いてセットリストによるとオリジナル楽曲の「Unrest」 → Bob Dylan「I shall be released」、大きくゆっくりと広がってく音がすこぶる気持ちよくって、ぽわーっとしてたらいつのまにかウトウトしてしまうほどだった。やわらかいブランケットのような心地よさは今まで無かった感覚で、このままでは寝てしまうヨ!なところへ入り込むのは「アラバマ・ソング」。一気に風向きが変わった。場内も歓喜の熱が帯びる。旋律の複雑な歩みを唄いながらギター爪弾き、ひとりでこなす凄さよ。圧倒された後の「just like a boy」、想いの深さがこちらに強く伝わってきたのはミチロウさんの復活を祈る故だろう。素晴らしかった……。元からのギターの技量と唄心に、今の想いが素直に重なったときの、音の説得力は実に凄まじい。気持ちが歌詞そのものを超えて、ギターと同等に直結し共鳴して唄を紡ぐとき、最強のものになる。


第2部はニシモトさんと。アンビエントなインプロは前半こそお互いの真面目さが立つ音だったけど、途中からぐんと深まって胸にキタ。ニシモトさんとのこれまでの数回に足りなかったものがあった。そして、田中麻記子さんによる絵画!白い布に裏側から滲む色が踊るように広がるさまにドキドキした。描かれる絵をそのまま見せていただけるなんて、贅沢だなあ……。完成したのは、洗練とユーモアが同居した素敵な作品だった。田中さんの作品は花椿で連載されていて、webマガジンの特性を活かした手法がとても良いのです。
はつはるの宝石 | 空想ガストロノミー | 花椿 HANATSUBAKI | 資生堂


第3部は再びヤマジさんひとり。television”Little Johnny Jewel”で始まって、「カバーばかりだとJASRAC的に……」と”ばるぼら”を。「今度映画化されるそうだけど、使える曲があるのに何故話が来ないのか」と笑いを誘っていたけども、この曲はエンドロール的だなあと思いながら聴いた。そして"天使" 、儚いひとりぼっち感は無く、甘い香りがした。 それから”indian summer”、というと私はbeat happeningの曲を思い出すけど、doorsのかー!全然頭になかった……。微睡む音色が夢見心地なひとときを生み、”waiting for the light”を挟んで、beat happeningの”indian summer”へ移るという素敵すぎる選曲!こういうところがヤマジさんだなあと嬉しい。


第4部という名のアンコールは"setting sun"で、もう一度の第5部、なんて曲かわからなくて、フォークソングかーやっぱりヤマジさんの根底にはフォークソングがあるのだなあなんて聴いてたんだけど、「くれないホテル」でありました。題名は聞いたことあるくらいなのに聴き馴染みあるメロディに感じるのは、筒美京平作曲ゆえかしら。こういう曲も唄っちゃうのがヤマジさんの強さだな。最後はギターのグルングルンが凶暴化して、終了。


地上へ出て、まっすぐ進む夜道を「くれなぁい、ホテルゥゥゥ」と口付さみながら散歩したいっすなーって気持ちを抑えて、電車に乗った。もう遅いし寒いしね。んでもあのあたりの散歩、楽しいんだよねぇ。


会場はテーブル席で、開演前や休憩時には友達と談笑する人にひとり本を読む人、呑みが進む人など、仕事や家のことから離れて、個人個人の自由さが感じられ、演奏が作り出す空気に混じり合って、それぞれが生きてきた歳月がそこにあった。この一週間、不意に思い起こすメロディはヤマジさんがこの日唄った一節だった。