「ロシュフォールの恋人たち」とピンク色

先日ミシェル・ルグランが亡くなった。90年代昔話になるけれど、oliveに載った「ロシュフォールの恋人たち」の上映広告を部屋に貼っていた。洗練されたカラフルな画は殺風景な部屋を彩り、憧れを乗せてくれた。サントラが今までと違う切り口で語られて、”映画音楽家”というものを意識して見た初めての映画だったはず。こんな映画をこうやって映画館で見ることが出来るのが「東京」って時代だった。映画は勿論素晴らしく、「La Chanson des Jumelles」を偽仏語で口づさみ、くるくる踊りながら帰宅した。サントラを家で聴くと壁に貼った憧れが軽やかに踊りだし、ここではないどこかへ連れて行ってくれた。

ロシュフォールの恋人たち オリジナル・サウンドトラック

ロシュフォールの恋人たち オリジナル・サウンドトラック

映画に寄り添いながら、その場面の芯を抽出し華麗に音で描き出した旋律は、スクリーンを超えて時を超えて、世界を彩り続けてくれる。

ピンク・黄色・水色・白が目に浮かぶこの映画には、「カワイイ」という形容は似合わない。

たまたま通りかかったこの壁を見ながら、子供の頃から「ピンク色は好きではなかった」のは、日本で生まれ育ったゆえの刷り込みなのかもと思えた。文化を感じる洗練された色。そこにははしゃぐ若さはなく、歳月の重なりがある。