消える

今夜は時間があったので、仕事終わりに逆方向の電車に乗った。好きな珈琲屋さんが今週は営業時間延長してて立ち寄れるなんて、嬉しい偶然!
BGMの無い店内は、いつもどおりにコポコポと珈琲を抽出する音だけが聞こえ、遠くから電車の走行音が聞こえ、いつもと違うのは窓の景色だった。外が暗く真向かいの家が見えないのは初めてで、暗闇に私の姿が映っていた。ぼんやり眺めていると、通り過ぎる人の姿がぬーっと幽霊のように重なり、ドキッとした。多重露光の写真のようでもあった。次第に窓は結露の所以か白くなりはじめ、気がつけば、私の姿は夜道に消えていた。
デミタスの苦味と甘みは時間を置くと味わいが変化していく。疲弊した心に滲みた。ひたすらに静かで、珈琲と向き合えるこの店が好きだ。日々の諸々から自分を離すことが出来た、密やかなひととき。