鑑賞記録

備忘録として。

飯沼珠実「東ドイツにみつけた三軒の日本の家/二度消された記憶」
http://www.kanakawanishi.com/exhibition-ph-013-tamami-iinuma
奇妙な事件に奇妙な偶然。記憶装置としての「写真」とは。”記憶が消滅した”事実をどう切り取り浮かび上がらせるのか、その匙加減が良かった。飯沼珠実さんの写真、やっぱり好きだなあ。西麻布の外れの古いビルの中にあるギャラリーの、窓からの景色も素晴らしく、いい空間と時間だった。



富田直樹「東京」
https://www.mahokubota.com/ja/exhibitions/2112/
建築中の国立競技場や看板取替中の109など、2019年の東京の変貌する街角を描いた風景。空虚に見える光景も、もったり厚く重ねられた油絵の具のテラテラした様と相まって、不可思議な郷愁が浮かんでくる。土曜の午後の光あふれるギャラリーのぽっかり感も良かった。



中野正貴「東京」
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3612.html
90年代初頭の渋谷の、誰もいない風景。パルコ。隣の壁画広告。ああ! 30年は長いのか短いのか。それにしたって「今はもう無い」景色が目の前にこの大きさで鮮明に現れると、錯覚と混乱が頭の中をぐるりとする。そこには人がいないから、情緒や流行や情報が廃された「街そのもの」が写し出されるのだ。(撮影可)
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ダムタイプ|アクション+リフレクション
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/dumb-type-actions-reflections/
清澄白河に久々に来たところ、店が増えてるし混んでるし、客層も含めて「知らない街」に迷い込んだみたいだった。館内のもうひとつの展示は「ミナ ペルホネン」だったので、ここでもまた客層の分断が……。そんでもってダムタイプ。再生機材の技術的更新をヒシヒシと感じながら、圧倒的な寂しさが漂っていて、過去の映像なのに遠い未来の誰もいない空間でぽつねんと再生されてるような気がした。アーカイブの印刷物と年表も素晴らしかったなあ。



「地域の編集 ローカルメディアのコミュニケーションデザイン 」展
https://chiiki-henshu.com/
ローカルな紙メディアを集めた企画。楽しかった!こう並ぶと、伝えたいことをどう表すかの編集力とデザイン力が試されることを実感。予算もそれぞれだろうけど、一時期多発したクウネルのマネっぽいのではない切り取り方もありつつ、伝えたい!って気持ちが素敵。



牧野伊三夫展
http://hbgallery.com/blog/2019/12/21/%E7%89%A7%E9%87%8E%E4%BC%8A%E4%B8%89%E5%A4%AB%E5%B1%95-hb-no-18/
混雑する表参道の裏通りを抜けて。とても良かったなあ。緑にも様々な色合い。さらっとしつつも複雑でピシッとしてる佇まい。解体工事現場を描いた作品にハッとした。こういう描き方もあるんだ!



安西水丸「さざなみの記憶」
http://sanyodo-shoten.co.jp/news/2019/12/post-175.html
娘である安西カオリさんのエッセイに添えられた、旅先でのスケッチはブルーインクで描かれていて、さらさらと軽みある描線の迷いのない美しさ。印刷には出ない、繊細な青味に惚れ惚れした。



心に留めた感情をここに表しておきます。