「ハマスホイとデンマーク絵画」

初めて見たのは2008年、国立西洋美術館での「ヴィルヘルム・ハンマースホイ展」だった。ハンマースホイハマスホイと、今回から名前の表記が変わったのは、デンマーク語により近い読み方にしたとのこと。オアシス/オエイシス、ピーター・ガブリエルピーター・ゲイブリエル的な?
今回は東京都美術館にて開始直後の平日昼間に向かった。久々の銀座線上野駅は改札〜出口までが改修されてきれいになっていた。以前は暗くてちょっと怖いくらいだったけれど、JR側にも店が増えて華やかな印象さえあった。
様々な人が集う公園の賑やかさを抜けた先に佇む都美は前川國男設計の、モダンでクラシカルなレンガタイル造りの建物で、敷地に入るとすっとスイッチが入る。その中の一番奥の会場へ。

今回は前半部でデンマーク絵画を紹介。これがまた素晴らしかった。印象派のようなやわらかな光の作品もあるけれど、光の加減が全然違う!フランスのようなキラキラした世界ではなく、明度が低く極めて静かで、ハマスホイに繋がる「人の不在感」がある。
ハマスホイの絵画の「ここじゃない感」はほんとうに不思議で、翳りのあるぼんやりとやわらかな光は、体が弛緩しそうなのに背筋が伸びる静謐な世界。穏やかなのに不穏な空気が纏わりつく。ハマスホイの網膜を通して表れる、彼岸。吸い込まれるように惹かれてしまう。
ふと思い浮かべるのはエレクトロニカ〜ポスト・クラシカルな盤のジャケで、そんな表現が生まれた2000年代だからこそ、ハマスホイが再評価されたのかもしれない。08年に西洋美で見たときはそのなかにいたからか、客観的にはそう思えなかったけれど。
禁欲的な世界観に浸った後のグッズ売り場は、さながらインテリアショップのような品揃えで「お金を!落として!ください!」な気合の入れ方にギョッとしたんだけど、北欧雑貨がオシャレアイテムとして「一般的」になった今だからこそ人気を博すのだろうし、描かれる室内画も昨今人気のカフェの「シャビーでブロカントな」雰囲気に例えられそうですね……(白い目)