2020年の「あとのまつり」

もはや日にちの間隔が無くなってきた。4月もあと5日、ってところで瀬田なつき監督「あとのまつり」が今月30日まで無料公開中ということをここに書き留めておきたい。是非見てほしいです。2009年につくられた、たった19分の、刹那の永遠のキラメキは、311を過ぎて、コロナが蔓延する今の空気の中にも輝いていることに泣く。
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初めて見たのは2010年、10年前maplecat_eveさんが瀬田なつき監督作を激推しされていたので知ったのだった。(maplecat_eveさんの映画と音楽への深い愛情込めた言葉が大好き!)(あのころのはてな、懐かしいね……。)主演の中山絵梨奈さんの瑞々しくもキリリとした線と眼差し、素敵だな。今はどうされているのだろと思ったら、共演の福田佑亮さん共々芸能界を引退されているようで、ホント10年ひと昔だなあ。ちょい役の仲野太賀さんは今では人気俳優さんだものね。

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当時書いた感想がアツい!興奮してるのがわかる。引用してしまおう。

だから「はじめまして!」って手を振るのだ、だって「イルカが手を振ったこと」を知らないんだからね。
たどり着いたのは東京湾岸、豊洲。ここはたった一度だけ「フジロック」が行われた場所だ。「東京オリンピック宿舎予定地」でもあった、このポカンと荒れ果てた草むらには「ハルナと山田くん」がいるのではなく、「ノリコとトモオ」が「全フェス!」って飛び跳ねたってこと、ただそれだけで胸がいっぱいになる。それにしても少女の瑞々しさは刹那の輝きで、キラキラしてるけどなんて残酷。だからこそ、そんな「トクベツなイマ」を軽やかに果敢に映しだすのだ、瀬田なつきという1979年生まれの監督は。

病に侵された世界、東京オリンピック予定地、うわ、なんて示唆的!
んでもね、映画はいつでも「ボーイ・ミーツ・ガール」で始まるってのに、街を彷徨うことが出来ない今はいったい何処で出逢って物語がはじまるの? ああ、「2020年におけるボーイ・ミーツ・ガール」とは! (ドンドン!と机を叩く)ステイ・ホームな彼らは偶然に出逢うことすら出来ないんだから、街中を一緒に走り抜けたりダンスするなんて刹那な輝きは起きないんだってこと!(「あとのまつり」とはよくいったものだ、今私たちが数ヶ月前のことをアレコレ思い返しても、すべて「あとのまつり」なのだ)
「2020年の世界」を描いた映画を見る日はいつやってくるのだろう? 「忘却の彼岸に何が残るのか」と”記憶を失うことを前提に生きている彼ら”がみんなに「はじめまして!」と手を振るならば、”コロナに感染することを前提に生きているわたしたち”は、逢えないままPCに映るみんなに「さようなら!」と手を振るしかないのだろうか。せめてソーシャル・ディスタンスを保ちながら踊ろうか。


【追記】2020.5.1
岡崎京子ジオラマボーイ パノラマガール」を、瀬田なつき監督・脚本で映画化!のニュースに大興奮よ!んで速報映像ではラブリーを口ずさんでいるところに一抹の不安を感じつつも、まあオザさん使うわなあ……今の時代設定で東京オリンピック開催を前にした日々で描くと思われ、「あとのまつり」と繋がってる!と震えるのである。数年前に「5windows」恵比寿映像祭上映時のトークの質疑応答で「オリンピック前の東京を描いて欲しい」と伝えたところ、準備はあるとboidの方が仰っていたのだけど、このときから企画に上がってたら、泣く。