破壊の日

豊田利晃監督最新作は、元々東京オリンピック開催日に公開として企画され、クラウドファンディングが開始されていた。ところが。

『破壊の日』は東京五輪を控え、強欲という物の怪に取り憑かれた社会をお祓いしてやろうと思い、今年の一月に企画を立ち上げました。 しかし、その物の怪はコロナという現実的な死の脅威、あるいはコロナに脅える人の心に変貌しました。(中略)この映画で映画を撮る意味、生きる意味を、再び証明したいと思っています。 2020年5月1日 豊田利晃
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制作準備もままならなくなり、公開日延期を考えたものの予定通り公開。

“ 6/22にクランクイン、6/30にクランクアップ、そこから編集に4~5日、グレーディング、アフレコ、音響効果録りを経て、ダビング作業が7月20日、DCPに落として初号試写が22日、23日に劇場納品、24日に公開 “
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て何このスケジュール!


今月22日に封筒が届いた。クラファンの返礼品である豊田監督直筆サイン入り手紙と鑑賞券だ。公開日前日には前夜祭と称し、宮益坂御嶽神社から一部出演者が練り歩き、スクランブル交差点を抜けて、WWWへ向かい、ライブを敢行。その様子はネットで生配信された。渋谷横断は流石に警察の許可を取っていて、よく取れたなあと思うけど、豊田組の本気を見た。


さてその1週間後の金曜日、会社帰りに渋谷ユーロスペースへ観にいった。109から東急本店に向かう道の、センター街側にある看板建築が3軒並んでたところ、いつの間にか真ん中しか残っていなかった。渋谷の街は7月上旬に「プラネティスト」観に行った時よりも、断然人出があった。

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初っ端からものすごい爆音が流れるので驚いた。終始凶暴で極悪な爆音!見えないものも炙り出す、気配を形にしたようなサウンドデザインで攻めてる!ホラー/サイコスリラーな映画なのか?って思うような。


「ポルノスター」「蘇りの血」「モンスターズクラブ」を貫く内容で、マヒトの赤い叫びに「空中庭園」の小泉今日子が重なった。ゆっくりと映し出すスクランブル交差点には13階段のイントロは流れなかった。都知事選選挙期間中、人々は皆マスク、すれ違うことが難儀ではない程度の人の量。ど真ん中で立ち止まり嬉々として動画を撮る外国人観光客なんていない。2020年6月後半の渋谷の街が克明に記録された。物理的に大変貌した宮下公園や南口らへんも撮影されていれば、もっと嬉しかったけど。荒野と鬼丸がいたあの場所は強欲の物の怪に取り憑かれてしまった。


マヒトを主演にできたのも、豊田監督らしいヒキだなあ。そして龍平と窪塚の邂逅には痺れた。しかも見慣れた宮益坂で!


イントロダクション要素が強く、監督の頭の中では流れているものの、形として表出するとイメージ映像になりがちでなかなか難儀な映画ではある。わかる人にだけわかればいいというのも、逃げになってしまうだろう。
でも。脈絡がなくてすっとわかんないんだけど、グッと心の芯に突き刺さる物が有る。今の状況下で超過密スケジュールになっても、最善を尽くしてやり遂げること。日本に巣食う魑魅魍魎に対し「変われ!」と強く祈り叫び、その先を示してくれた。自分で出来ることを、生きることは映画を撮ることだという覚悟を、強く叫んでくれた。ホントに徹頭徹尾、豊田利晃監督作だよなーー!今後の作品が楽しみだ!