Francis Bake on

あれは3月25日、ヤマジさんの誕生日ライブのアンコールで緊急事態宣言が発令されたことを知った夜以来、世の中が凄まじい勢いで変わり、それでも変わらないものは変わらないのだと溜息を吐きながら春も夏も過ぎ去り、秋も終わりを告げようとする頃にようやくライブに行くことにした。再開はdipだと幼い拘りを持っていたけれど、Francisとヤマジカズヒデの2人だなんて、面白いに決まってる!
タイトルは「Francis Bake on」、どういう意味だろうかと時折思い出しては呟いて、ああFrancis Bacon!と気づく。ヤマジさんらしい魂抜かれる言葉遊び。


11月19日木曜日。下北沢queへ降りる階段上にはスタッフがいて検温をされる。階段を更に降りると目に入る告知チラシに、あーqueに来たなあってしみじみする。

f:id:mikk:20201123082936j:plain:w300

入口ではスマホ上のQRコードを見せて電話番号を聞かれる。中に入ると椅子が並んでいた。40席ほどだろうか。ステージ前には立ち入り不可の鎖が施され、場内はPA向かいにブースが新設されていたり、若干改装されていた。ライブ前のザワザワした雰囲気皆無。開演時にはスタッフであり出演者であるドラマーの高橋浩司さんから「終始マスク着用で」などと説明があった。これが、今のライブ様式なのだ。


開演。Francisがまず1曲。この方の全身捨身で解放するステージングは最初こそ気まずい感覚を受けるのだけど、素っ気無いライブハウスの狭いステージを、ダンサーやセットのように間を埋める存在もなく、たった1人で染め上げようとする心意気に次第にスゲーな!と感嘆する。Francis55歳。


2曲めでヤマジさん登場、初っ端のギターの音色がウッと胸に来て、涙が浮かんできたのを堪えた。ああ、やっぱり、音が全然違う!ああああああ!言葉で表現できないというか、言葉を放棄してしまうよ。

そしてLilyさん(申し訳ないことにこれまで存じ上げずでした)が入っての primal scream
版“some velvet morning”
!!!ギャー!カッコイイ〜〜。Lilyさんは実際にモデルもやられているくらい容姿端麗で、ケイト・モス役がピッタリ。Francisはボビーのヤクの売人みたいなやさぐれた(超失礼)風貌に近しいので(超失礼)これまたハマる。今度はLUNA風味の「ボニー&クライド」を聴きたいです!

と思ったところで、“ Je t'aime moi non plus " ・・・!!!えええええ!セルジュはやるだろうなと思ってたけどこれか! Lilyさんもいるし、超王道にしたのかな。というか、コレ、ライブでやるにはめちゃくちゃハードルが高いと誰もが思う筈で、しかもライブハウスで、客は着席で、すんごいやりづらいだろうに、FrancisもLilyさんも照れを見せることなく完璧に演じていて素晴らしかった。

そしたらデスよ、鳴り響いた打ち込みのイントロに、こここ、コレは・・・! ” ghost rider ”・・・!!!わああああああ!この曲ヤマジさんのライブで聴けるなんて!大興奮してカッコ良すぎて盛り上がりすぎて、椅子から転げ落ちそうになった(桂三枝張りに・・・)!! 更にghost rider は、後半に高橋浩司さんのドラムを加えてヤマジボーカルのNEU!風味でdipな展開で再度演奏されたのだった!「布石」とヤマジさんボソッと言ったので、今後のライブで演奏されてくのかも!楽しみ!

後半のバンドセット1曲めはオリさんのベースラインが響く” fever “ 、私としてはmarinegirlsでありヤマソロ3rdなんだけど、crampsバージョンだそう。渋くてカッコよかった。
2曲目はCAN “ moonshake “、オリさんボーカルで。次々とこんな選曲、嬉しいなあ。


F「僕はdiptheflagの頃からヤマジくんのファンで、よく見に行ってたんですけど」
Y「えー、こんな人見たことない、あ、、その頃はマッシュルーム、ネオヒッピーズ」
F「そうそう、サイケ柄着てて。当時televisionの来日公演で偶然お見かけした時にご挨拶したんですけど、すごくクールに流されて」
Y「その頃閉じてたから」
  一同笑 (ってモモさんの時といい、ネタになってる・・・)
F「あの頃こうやって一緒にライブやるなんて思ってもなくて。音楽っていいねってことですよ皆さん」
  一同拍手


続いてトーキングヘッズの ” thank you for sending me an angel “、この頃カバーされる機会の多いトーキングヘッズ、この曲だと超余談だけど、先述のLUNA版ボニー&クライド収録の12inchを思い出したぞ(こじつけ)。
それからやっぱりのヴェルヴェッツは” real good time ”、掛け合いがカッコイイ!そしてgang of four ” I found that essence rare ”!! 蠢くベースに切り刻むギター!
そしてそして、television ” see no evil”、出だしのギターはLilyさん担当で、いつもとちょっと違うバージョンになった。

アンコールは” MY WAY “、日本語詞の勝新太郎verとのこと、朗々と歌い上げるFrancisに、シドなパンクというよりはヤマジさんの真骨頂なオルタナ轟音ギターが吹き荒れて、エモくて凄まじい嵐のような、ものすっごいものを見た。

ーーー

実に7ヶ月半ぶりのライブハウス。今までほぼ毎月(時には月に何回も)行ってたことを考えると、ワスよく行ってたなとも思う……。でも、ステージの演奏を「不特定多数の人々とともに見ている」のに、「自分だけの空間になる」という不思議さは、現地で見るからこそのものだと再認識した。

ライブハウスというハコに入って、自分のスイッチングでステージを見つめ、スピーカから大きな音を浴びることってやっぱり違う。配信は普通になっていいと思うし、その良さ(カメラワークとか)も実感したけれど、自室で四角い板を見つめることは「自分だけの空間」にはなりにくい。あとまあ、一応書いてしまうとFrancisのようなステージアクトは会場だからこそ映えるというか、家でテレビサイズで見てしまうとなんかこう、客観的になっちゃうのね……。

ヤマジさんのギターが胸に落ちる、比喩ではなくて物理的にほんとにそうだった。
そんな感覚を思い出させてくださって、ステージ上の4人は勿論、スタッフの皆さんに感謝します。チケ代は割増になってもいいのでは無いかなあ。手間と配慮が格段に掛かっているのに客数は少ないし、今わざわざライブハウスに行く人たちは割高になっても文句言わないはず。それにしても、割安だからってクーポンで旅してハメ外してる人たちよりずっと気を使ってるのにね。

今の状況はまだまだ続くだろう。自分で考えて配慮して、全方位に無理がない選択をして、今後もライブハウスに足を運ぼうと思う。