最後の原美術館

原美術館がまもなく休館する。

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事前予約制のため平日に年休を取った。この数年は魅力的な展示に思えず足を運んでいなかったから随分久しぶりで、晴れて気持ちが良い日だったから目黒駅から歩くことにした。

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目黒は古い街だから、駅からすぐの路地に入るとびっくりするくらい整理されていない。暗渠に家が密集していたり、昔の細くうねった道そのままに家が建ってしまったところも多い。

坂を上がると公園があった。

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回遊式の庭園はひっそりとしていたし、木々の色合いもちょうど美しかった。

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坂を下ってまた上がる、その繰り返し。

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坂の上は立派な邸宅が多く並ぶけれど、マンション建設中の看板がある空き地も多かった。建設中なのがマンションだけではなく老人ホームというのもいくつかあったことが印象的。それでも街角には高い樹々があり、色づいて美しかった。この地で根を張り、何年になるのだろう。かつて邸宅があった土地を区が買い取り、広い庭の植栽を生かして公園にしたところもいくつかある。今後は益々相続されない土地が増えるだろうから、マンションになるのではなく、活用されてほしいなあ。財政難で難しいだろうけれど。

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漸く原美術館界隈へ辿り着いた。このあたりも記憶の中の景色と変化していた。良いなあと思っていた建物が更地になっていたり、ひっそりとした家屋の前ではサラリーマンが名刺を交換していて、ああこれから売買されるのだなあと思えた。

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塀に瓦があることがポイントで。

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予想以上に人がいた。館内は「記憶に留めてください」と撮影不可でよかった。最初の部屋に入った時の窓に映る影が美しくて、まさに作品になっていた。そしてその隣の部屋の半円状のサンルームのような場所に入ると、ちょうど傾き始めた陽の光が私の瞳にジャストで入ってくる高さで、外壁の白いタイルに樹々の影と反射した光が揺らぎ、眺めていたら泣きそうになってしまった。私はこの瞬間を忘れたくないけれど、いつか忘れてしまうだろう。でも体の中にその感覚は残って、私の養分になるのかもしれないしそう願いたい。

展示自体は私の好みではなかった。2階に奈良美智の部屋が出来た時の違和感を思い出した。

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併設のカフェで休憩。ここのテーブル上だけは撮影可。給仕の年配男性の接客が素晴らしく、最近こんな接客の店は無いなあと思った。勿論、ホテルや高級レストランならばあるだろうけれど。原美術館へ行くのは背伸び気分だった。カフェもお高めに感じながらデザートも頼んだ。展示のテーマに合わせたデザート。でも今日は紅茶だけにした。食べるとお腹が辛くなることが怖かったからだ。街は変化するけれど、私も変化したものだ。甘いもの頼まなくなるなんて。

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この時間を選んで正解だったな。景色の色合いがとても美しい。敷地を出るときに振り返って、心の中でお辞儀した。長年ありがとうございました。

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品川駅へ続く緩やかな坂道を歩きながら三菱関東閣を眺めて、八ツ山橋踏切で京急と北品川アパートを眺めることがお約束。原美術館へ行く時はその前後の散歩も込みだった。今日は目黒駅から、池田山・白金台・高輪台・島津山・御殿山と歩いて原美術館へ。その名の通り、いくつもの「山」で出来ている街並み。何度も歩いている街なのに、歩くたびに発見がある。

たくさんの秋の光と色を吸い込んだ一日。とても幸せな一日。