変化と継承

好きな飲食店Aが、先日閉店した飲食店Bの跡地に移転するとのこと。Bも好きな店の一つなのでびっくりした。
Aの店名を決めたのが、ずっとお世話になっていたBさんだという。共に不思議な店名だけど、そういうことだったのか。
Aは10数年前の開店早々に偶然知って行った。都下の長閑な街に現れた風変わりな若者のゆるい店のイメージがありながら、味はビシッと決まりつつ独創的でとても美味しかった。大好きになって足繁く通った。ちょっと離れた場所にある幾分変わった店の空気が好きだった。食べたあと散歩する道のりも好きだった。311の1週間後の休日、今まで通りに食べに行った店もここだった。あの日の感覚は今も覚えている。

縁があって今の場所に移転すると、その街が持つ空気に沿った喋り場な雰囲気が漂っていた。私には幾分入りづらくなり暫く伺っていなかったのだけど、最近再び食べに行くようになって気づいたのは、店主が店に集う若者の良き相談相手になっていたことと、安定した美味しさには頼もしさがあることだった。
そして長年、自分が自然にそこに居た店が壊されることが寂しくて手を挙げたそう。今移転して落ち着いたころには世間の状況も変化して、またみんなが気楽に食べたり飲んだり出来る居心地の良い場所を作りたい、だなんて、ああ、こんな継承もあるのだなあ。

その街に行き交う人がいれば店が生まれ人が集う。たった10年程度で世の中も街も人も店も変わる。一気に増加して一気に消えてくタピオカ屋のような瞬間消費ではなく、街と行き交う人ともに育まれ変化する店もあるのだ。