another labo 12 ヤマジカズヒデ ソロ

3月25日ヤマジカズヒデ誕生日、いつからか恒例になったバースディライブ。今年はヤマソロで。

セットリストを拝借すると 1.garden 2.you can't talk to the dude / jonathan richman(!) 3.barbolla 4.lost cause / beck 5.何処へ行こうか / 大江慎也 6.over sleeper 7.抱擁 / mucti 8.white field/ dip the flag(!!)9. wildwood flower / joseph philbrick webster 10.夜光少年/ dip the flag(!!!)11.月が見ていた / 花田裕之 12.since yesterday / strawberry switchblade 13.セル 14.after sunday 15.superlovers in the sun アンコール. blowin' in the wind / bob dylan


着席だったので落ち着いて見ることができてよかった。「labo」といえども(最近気になっていた)工房に篭った感じでも「ヤマジの部屋」的な(ありがちな)内輪な雰囲気でもなく、丁寧に演奏され歌われる楽曲をじっくりと聴くことが出来たライブだった。落ち着きが感じられた。この体制も何度めかなので客側も慣れてきたのか、双方の温度が近しく感じられた。


2曲目にジョナサン・リッチマン!嬉しい。ヤマメロに吸収された感覚を思う。
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3曲目 ばるぼら 
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「刺激にやられて溺れきる それが日常になって 生活になったら 別の何かが始まってしまう」ーーー 歌詞を引用した話題はファンにはああ……と思わせるものだけど、この曲の崩れそうになりながら回り続けしゅんと消えてしまう余韻の切なさには、聴くたびに胸を締め付けられる。qybの活動の中生まれ、dip名義とはいえベラさん共にほぼ1人で制作したfeu follet収録曲であり、ヤマジさんのセットリストには「ばるぼらqyb」と記してあることにも。


5曲目 何処へ行こうか
大江慎也がこの歌詞を歌うことに意味がある」とヤマジさん。『人は口々に言う。好きなことをしようと。皆そのために生きているんだと。皆そのために生きているんだと』 その意味を汲み取りながらしっかりと歌う声がとてもよかった。


11曲目 月が見ていた
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「花田さんに“今の曲いいっすね”と言ったら、“ん、オレの曲”って言われたんだけどね」と笑わせる。そんなヤマジさんのくだけたところも良いな。カッコつけていない感じ。そんな素直さがギターの技と共に頼られる存在になったのではないだろうか。


9曲目 wildwood flower
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ピッキングが美しいトラディショナルな楽曲。青木隼人さんのようなギタリストといつか遭遇すれば面白いのになと思いながら聴いていた。



8曲目 white field
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10曲目 夜光少年
ERA
張り詰めた空気はかつてのヒリヒリさはなく、澄んでいた。こちらはキュッと息を潜めて聴いてしまうけれど、緊張感はなかった。
こんな昔の曲を披露した後に「昔の曲をやって感慨深いとかは全く無い(キッパリとした口調で)。youtubeで聴ける時代に於いては昔の曲も今の曲も並列になってるから。」との話がなるほど……だった。昔の曲を歌っても違和感なく「昔のまま今の曲になっている」ことにいつも感嘆していたから。過去の自曲をやると歳の経過ゆえのアレンジをしがちだけど、ヤマジさんは昔の空気のまま今呼吸し歌いギターを弾くのだ。これまでのセルフカバーとは異なり、今の時代に最適化してリマスターに近い感覚。「カセットテープの樹海」ではなく「データの樹海」から取り出したタイミングでアップデートしてる感じ。それは歌声やギターワークの向上とともに、自身の意識の変化が大きいだろう。また、近年、セッションで先輩・同輩たちと自分が若い頃によく聴いていた楽曲を演奏することが多いことも影響していると思う。今の自分の日々にシームレスに流れてくる感じで。
過去の曲というのは、ファンにとっては思い入れがあって場が盛り上がるもので演奏側にはファンサービスもあったりするけど、ヤマジさんはそんな情緒を切り捨ててくるね笑



アンコール blowin' in the wind
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地鳴りのような音が響き続けた。美しく澄んだ歪みは音が波形として目に浮かび皮膚に刻まれた。今のヤマジさんの凄さは音に想いを伝えることが出来るところ。先日ライブをした大江さんとの会話から得るものもあるのかもしれない。この響きが彼の地へ届くだろうか。



客電が点き、駆け足で駅へ向かいホームで電車を待つ間ツイッターを立ち上げた途端に飛び込んだのは、青山真治監督の訃報だった。今さっき、ヤマジさんのギターを聴きながら、ふと青山真治監督を思い出したのだ。「ドライブ・イン蒲生(青山真治監督作で撮影監督を多く手がけた、故たむらまさき氏の唯一の監督作)」で何度も印象的に使われた「blue bus」のギターを『ジョニー(サンダース)さんぽくていいね』と言っていたなあ、ああいつか青山監督作の音楽を担当する未来はあるかなあと、思っていたのだ、偶然なことに。だからほんとうに、ほんとうに、びっくりして、息が止まってしまった。次回作の準備中だったという。
病で、事故で、戦で奪われる人もいる。皆志半ばで、意志とは関係なしに。
だからこそ、人は皆好きなことをして、自分のために生きるのだ。そんなことがフィードバックギターの余韻のように頭の中に響いてきた帰り道だった。