ゲルハルト・リヒター展

仕事を早退けして平日夕方に東京国立近代美術館へ。「ゲルハルト・リヒター展」を見る。
https://www.momat.go.jp/am/exhibition/gerhardrichter/

この時間なのに結構な人入りで驚いた。いくら人気作家といえどもハテ、抽象画は一般的に受け入られていたっけ?と疑問を持ったものの、作品を「観ること」よりも「撮ること」に時間を掛けてご執心な人ばかりだと気が付いた。お気に入りの作品だけならまだしも、全ての作品を撮影する人々。図録買ってくれよ……。シャッター音や歩く音が耳についた。そんな騒々しい館内はそもそも天井が低い上に複数に区切るため狭くなった空間に作品を詰め込みすぎ。余裕ある気持ちで観ることが出来る環境が欲しかった、鑑賞料2200円也。

目玉の「ビルケナウ」が入ってすぐの一角にあり、幾度も色を塗り重ねては傷を付け剥がす、その繰り返しで作られたガリガリとした表面とテラテラした油絵具の質感で固められた大判の作品がスマホで撮られると、どんな様に「残る」のだろう。と思いきや、その向かいに「ビルケナウ」をデジタル撮影した「写真バージョン」があり、その間の壁面が「鏡」なのが皮肉的で、これまで写真を用いて油絵を描いてきたリヒターだからこその誠実な提示とも思えた。


その喧騒を抜けた最後の区画。昨年制作のグラファイトの作品が素晴らしかった。これまでの作品群の密集し行き着いた果てに辿り着いた軽やかさがあって、でもバシッと構成が決まってて。直線の入り方ったら!感動して何度も見入ってしまった。


2〜4階のコレクション展はもちろん素晴らしくて、ここに来るたびに見ても作品の差し替えもあるし見方が変わるから発見があるし、毎回観る萬鉄五郎梅原龍三郎の作品に元気を貰うのだ。1階との連動では「シルスマリア」が嬉しかったなあ。その上ベッヒャーの「ガスタンク」もあって嬉しい。7月末からはグルスキーに変わるそうでこちらも楽しみ。


思えば10年くらい前に川村記念美術館まで行ってリヒター展見たなあ。ギャラリーでもちょくちょく展示されてたから作品は都度都度見てきたわけだけど、こうやって一堂に介して、というのはやっぱり楽しいな。
近美の後はいつもは歩くけれど、今日の暑さではその気にならず。