灰野敬二 × 嶺川貴子

先週の嶺川さんと灰野さんのライブを何度も思い起こしている。


7月11日月曜日 下北沢440にて。今回の組み合わせを知った時の驚きと遂に!の感激。

嶺川さんのライブは2019年 七針でのパフォーマンス以来。つい最近も七針でソロライブがあったものの瞬殺で取れなかったので嬉しい。微かなドローンで始まり少しづつ音をループさせ広げていく姿は、音を紡いでいるよう。歌う姿は祈りを捧げているかのようなとても崇高な光を感じ、細く鋭いニードルでたおやかに胸に刺さった。密やかに掌に包み込まれた音が伝わり、心を震わせ、いつかへと繋がっていく。


灰野さんは前面に3台並べたCDJのような謎の機材(エアシンセというらしい)に幾何学模様に穴を開けた厚紙を載せる行為を繰り返す。そんな仕草で出力されるノイズを調整している様は黒魔術みたいだ。試行錯誤しながら一音に集中して世界へ語りかけているようだった。瞬間でブワッと来る音と後からジワっと来る音が層になっていると今思い返すと気づく。


最後はセッション。灰野さんは次々と楽器を繰り出し、ほらこれはどうだ?と挑戦し続ける。嶺川さんは途中迷い込んだようにも見えたけれど、光が射したように演劇的なアプローチで言葉を発し、これが私の姿なのだと天へ掲げた姿が印象的だった。


耳を澄まして、空間に在る音を探り、自分の中に在る音を紡ぎ出し放つことで、共鳴し反発しながらあの瞬間でしか存在しない音を作り出す。中心で万人に向けて掲げる大きな声ではなく、都会の隅っこで、小さな声で、でも強靭で揺るぎない姿がそこにあった。嶺川さんは修道女のようで灰野さんは吟遊詩人のようだった。ソロとは異なる、対バンだからこその音がうまれていた素晴らしい時間だった。
企画の「にじのほし」 ME:HOLIDAYSにじのほし さんに感謝します。