お家でフジロック〜Corneliusの帰還

今年のフジロック、配信にて楽しんだ記録。

【1日目】
ヴァンパイア・ウイークエンド、良いなあ!音色やリズム、楽器、奏でる空気、こんなバンドがトリを飾るようになったんだなあと今更さながら感慨深い。配信だと問題なく聞こえたけれど、現地では音が出てない大トラブルだったようで……。それでも場を観客と共に盛り上げるステージングを見せた彼らは、スタジアムバンド的なエンターテイメントを作り上げながらもいい意味でインディ感が保たれていて、素晴らしかった。



【2日目】
今日は朝からソワソワ。夕飯用におにぎり買ってきて、うちに籠る。
午後のthe finから鑑賞開始。湿度低い涼やかな音色で好きだなあ。何年か前にdipと対バンしたの信じられないヨネ!と思いつつも、NW的な共通項ある楽曲もあったりして。バンドというよりはボーカルの人の意志が強い感じだった。

石橋英子さん、素晴らしかった。灼熱の下で聴いたらそれはそれは白昼夢では……と思っていたら「雨だろうと決めつけて組んだセットリストなので、今の気候に全然合わない」とのMCに笑った。各メンバーの音に個人の創造性が溢れていて美しかったなあ。


苗場で石橋英子さん山本達久さん大野由美子さんヤマジさんで即興演奏する妄想……こんなことばっかり言いたくもなるよなー!

SNAIL MAIL、シンプルなギターロックな楽曲で良い。OASISのTシャツを着た彼女は99年生まれかー…… 曲自体はグラスゴーオルタナな響き。時折苛つきを見せる姿が若いなーって、こういう感じ、久しぶりに見た。

KYOTO JAZZ SEXTET feat.森山威男 すごかった!奏でることが楽しくて仕方がないって音。そして森山さんの余裕っぷり。もちろん曲終わりは魂吸い取られたみたいなお姿ではあったけど。KYOTO JAZZ SEXTETの面々も喰らい付き彼を盛り上げる演奏で釘付けになった。ジャズファンの中だけに留まらず、フジロックでの演奏の場を作ってくれてありがたいし、これこそフェスの醍醐味。

ダイナソーjr.カッコよかった!出だしから圧倒的で確固たる音をフルスロットルで飄々と出しまくって、どれも3分でスッと終わるの最高。ちょい前に見たドキュメンタリー映画での諸々を思い出すと泣けてくる「ザ・3ピースバンド」っぷりも最高。マスキスおじいちゃんの紫がかったピンクのカラーコーディネートも最高。

そして、Cornelius
待ってたよーーーーー。落ち着かなくて出番前はストレッチしてしまった。スクリーンに円環が表れて、ほろっとしつつも「この輪が5つになったりしませんよね?」とか、1曲目が「お蔵入り」になったやつだったりして……だなんて失礼な自虐的なツッコミをしてたら音が鳴り、あ、これは…「マイクチェック・マイクチェック、聞こえますか?」って生の声!わーーーーーー!スクリーンには「Thanksful To Be Here」だなんて、ああ、もう!
mellowwaveツアーのフェス版といった構成で、映像と音による緻密な構築をクールに表現しつつもこれまで通り映像のオモロ部分は無くさずに、「これが長年やってきたCorneliusの音楽です」と、ファンの気持ちを安堵させつつ、彼を見出しでしか知らない人への名刺のようだった。2曲目“ POINT OF VIEW POINT”で高速で流れゆく東京湾岸部は、先日1年ぶりに再配信された“変わる消える“では若者がたおやかに弧を描く舞台となり、その景色に乗る坂本慎太郎による歌詞は予言のように重なり、“Another View Point“で差し替えられた映像は「世界各国民族音楽集」……随所でどうしたって「想起」せずにはいられない。
m.youtube.com
“環境と心理“は昨年の騒動ど真ん中での配信ライブ、深々としたおじぎを思い出して余計に泣けてくるけれど、「今この瞬間」に寄り添うことにも驚く。metafiveとして作詞作曲を手掛けた小山田くんがCorneliusとして歌うことになるこの曲に「過去と今と未来」を無意識につなげていたのかもしれない。過去の自分に足を掬われることも気持ちを救われることもあるのだ。そして“Audio Architecture“の無音には今までよりちょっと長い体感があり、「無音」に耳を澄ますことが大切だと改めて思えたのだった。

ああ、こうやって記憶を残しながら私たちは考えて生きていくのだ。
海外に行ったり、アート方面に向かったり、日本のロック界ではない場で活動を続けることも可能なのに、フジロックでの活動再開を選ぶ小山田くんは律儀な人であり、「東京の人」なんだな。にしても顔かたちがまりんに近づいてて……。頬のこけ方に足の細さよ……。声もか細く聴こえてそりゃそうだよねだけど、堀江さんあらきさん大野さんがしっかりと施工する音は安心感ある鉄壁で、小山田くんも「みんなと」音を作り出す感覚を取り戻しながら中盤、インスト曲が続きギターを弾き鳴らすことでライブの気持ち良さが体内に満ちてきたのだろうか、声がぐんと出て来て強靭な音と同じ位置に立ち、観客たちをぐんぐんと誘った。「STAR FRUITS SURF RIDER」はここに至る発火点だといえるし、「あなたがいるなら」は辿り着いた地点だと思っていたけど、まだまだ通過点であり、今ここから未来へ進むCorneliusの音楽を楽しみに待つことが出来る喜びを感じ取った。
「Thank you very very much everyone」と掲げられたラストは胸が一杯になって、テレビに向かって「小山田くん!」と手を振った。素晴らしいステージを見せてくれて、本当にありがとう。何年か前のライブ鑑賞記録に「これから時代はどう移り変わるのかわからない。そのなかで小山田圭吾がつくりだす音世界をこれからも楽しむ自分でありたい。」と書いてあるのを読み返して、うん、ほんと、そうだなあ。小山田センパイと共に喜び楽しみ反省し考えながら歳を取っていくのだ。


MIC CHECK
POINT OF VIEW POINT
いつか/どこか
Audio Architecture
Drop
変わる消える
Another View Point
COUNT FIVE OR SIX
I Hate Hate
Surfing on Mind Wave pt2
夢の中で
Beep it
Fit Song
Gum
環境と心理
STAR FRUITS SURF RIDER
あなたがいるなら



【3日目】
Japanese Breakfastを途中から。アルバムにはピンと来なかったんだけどライブ良かった。生き生きとしてて気持ち良い。

ROUTE 17 Rock‘n’Roll ORCHESTRA 大所帯のなかからヤマジギターを聴き取る年イチ業務……

今年のゲストボーカルはUA中納良恵トータス松本の3人。“くちばしにチェリー“、ギターソロでヤマジさんが弾き倒すなんて…… 。UAは“この坂道の途中で“は絶対やらなそうな衣装であった……まあ、この場向きの曲じゃないわな……(涙)この3人の歌声は勿論素晴らしいけれど盛り上げ方がちと弱かったな、3人/バックメンバーになってたのも残念だった。

にしても。買ったばかりの「KISSxxxx 愛蔵版」にはコンピのジャケがポストカードで付いていて、読んだ後にネット配信でフェスの大きなステージに立つヤマジさんを観るというのは、なかなか感慨深いんですよ、マジで……自身のバンドじゃないのが口惜しい。このバンドに参加してる間は本家では出演断りそうだな。自分で仕切る必要があるから心の余裕はなさそうな気がする。
KISSxxxx 愛蔵版 1 <楠本まきコレクション> (愛蔵版 楠本まきコレクション)
このバンドはロックンロールやソウル・R&Bのスタンダードナンバー中心なんだけど、そろそろ世代交代したver.も出来ないかな。NW以降に限定した選曲で。若い子たちには90年代だって歴史なんだし。モモさんがなんとかしてくれー……

青木ケイタさんの後ろに置かれた機材ボックスにヤマ字……(こんなのに気付く私は我ながらキモい)

elephant gym、台湾の3ピースバンド。残響を思い起こす音づくりがカッコいい。畳み掛けと隙間の妙。新曲がこれまた良かった!そして、片言でも日本語で伝えようと読んだ原稿に込められた志が素晴らしかった。見つけた記事、20年5月にこんなことを。すごすぎる。台湾という国が抱えてきた歴史と若い世代がしっかりと継承している強さがあった。
lp.p.pia.jp


Black Country, New Road すーごくよかった。ボーカルが抜けた事態を経ても、豊かで混沌としつつ風が抜けてて、若さと老成が行ったり来たりしながら瑞々しくて、屈託なくたくさんの音楽を聴いて閃く創造性に満ちていて素敵だったなあ。メンバーも皆愛らしい。こちらもアルバムはピンと来てなかったから改めて聞いてみたけどボーカルの声が苦手だからだとわかったし、こんな状況でも素晴らしい新曲でライブを行うのは一人一人の個性があってこそだなあ。

mogwai、拝みたくなる轟音であった……。漏水や建付なら直しちゃいそうな寡黙な職人っぷり。ずっと変わらずかっこいい。現地ならば当然もっと凄まじい静寂と轟音で、まさに神々しいだろうなあ。いつかグラスゴーステージ作ってくれれば良いのに。3日間余裕で埋まるよねえ。。。



今年もお家でフジロック、楽しい3日間をありがとうございました!