「アザー・ミュージック」を映画館で見て


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2016年に閉店したNYのレコード店「Other Music」のドキュメンタリー映画が遂に劇場公開された。本国アメリカではコロナ禍の影響もあり上映できないままで、映画館では日本が世界初という。
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配信で見たときに散々アツくウザく語ったし・・・
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レコードストアデイにリリースされたDVD付のレコードも持ってるけど・・・


イメージフォーラムでの上映も、見に行った。

本編終了後、監督のロブ。ハッチ=ミラー&プロマ・バズー、店主のクリス・ヴァンダルー&ジュジュ・マデルの4人による「インタビュー映像」が追加されていた。ここでクリスが言ったように、映画館のスクリーンで見ると「店の空間にいる」みたいだった。若かりし日の私がNY旅行の最後に偶然見つけて感激し、既にお金が無くてガックリしつつも次の日もう一度行った、あのときめきが蘇った。天井が高い店内は光が溢れていて、今までのレコ屋に無い気持ちよさを感じながらレコードやCDを見た。音が天井から降ってくるのも店と同じだし、見知らぬ、でも音楽という共通項を持つ人たちと時間を合わせて渋谷に足を運び、ひとつの空間で見る行為は、レコ屋にいるのと一緒で、映画館で見ることの良さがあった。
2000年初めの音楽シーンはこの店があるからこそ生まれたんだよなあと、そんな盤を当時買った店を思い出したけど、some of us、ワルシャワhmv渋谷みんな無いよー!って気付いて傷に塩を塗ってしまった……。


鑑賞後、パンフがわりに発行されたムック「ムービーマヨネーズ」3号(表紙が「アザー・ミュージック」!)を買って
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カフェで読んでたら、店主が「見たんですか?すごく良かったですよね!」と話しかけてくれて、感想を言い合い嬉しかった。ひとりで営業をされていて、週末の忙しい時間帯でも話しかけたくなる魅力がある映画なのだなあ。
「僕もこの店を頑張ろうと思いました」
そんな想いをもたらすなんて、素敵なことだ。この映画はあるひとつの店舗が無くなったことへの哀切や絶望ではなく、店主の想いや店内に流れたリズムは消えることなく、閉店後の片付け中にも刻まれ、引き継がれ、音楽と共にあらゆる街で鳴り続ける未来への希望なのだ。

店内には新しめのUSインディが流れていて尋ねると
SpotifyでAlex Gのradioにしてます、いろいろ聴けるからいいですよね」
なるほどカフェのBGMに使いやすい機能だよなあ。客はお喋りに夢中で恐らく音楽に耳を傾けている人いなそうだけど、店主が楽しく過ごせる音楽は大切だし、そんな店が私は好きだ。


街と店主と客が店をつくり、時間と共に広がっていくのだなあ。

街を歩き、店に入り、店主と話しながら見つけたものを購入し、家で聴いた音楽に影響されて、スタジオでセッションし、新たな音楽が生まれ、ライブハウスやフェスで誰かに聴いてもらう。もはや前時代の、今では禁じられた遊び事。私たちがマスクをせずに、なんの気兼ねも無く家から出ることを自由に出来るようになった頃、街には何があり、何に出会い、何が生まれるのだろう。とにかく今は、みんなが健康のまま暮らしを続け、希望を持つ体力を残して、一変した世界で歩き続け、また見つけていきたいのだ。

配信で見た21年2月当時、私はこんなことを書いた。22年10月の状況下は決して明るいものではないけれど、歩み続ける人たちがいることは希望であり、私はそんな希望とともに街に在りたい。