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福島県三春町で雑貨店「in-kyo」を営む長谷川ちえさんのエッセイ。二十四節気に沿って綴られる文章は移りゆく季節の中でささやかに咲く花々のよう。美しい装丁は品が良く、文章と呼応していて愛おしい。
巻末には元三春町長・伊藤寛氏を訪ねた記録が収録されている。
三春〜大髙正人が故郷に残したもの - 音甘映画館
三春を訪れたのは2019年の9月で、大高正人氏設計の建築物と民俗資料館・郷土人形館を見たかったからだ。残念ながら後者は臨時休業で半泣きしたもののの、素敵な街だったなあという思い出でいっぱいだ。それはこの街の風土を大高さんが的確に捉えてまちづくりをされたからだろう。勿論ひとりの建築家だけで成り立つ話ではなく、当時の町長が先進的な考えの持ち主であることも大きい。
先日、「in-kyo」さんからDMをいただいた。また三春にいらしてくださいね、と一言添えられていてとても嬉しかったなあ。三春に再訪したいと思って以来、旅にすら出ていないのだ。
3月6日(月) 金曜に言われたことをひきづったまま週末を過ぎて月曜日。「ほら見たことか!」な事象連発しつつも「淡々と」仕事をこなすのみ。あーやだやだ。にしてもこの記録をアップするころには新年度になので、ああ私の精神はどうなっていることか。怖い。
3月7日(火) 歩き方教室にて、ブレが無くなってしっかりしてきたと言われて嬉しい。指南もいただいて、前向きに頑張る。
3月8日(水) 昼間外へ出るとビルの谷間に梅が咲いていた。/ 上司の浅はかさにゲンナリすることがまた増えてきた。/ このまま夜を過ごすのヤダなーと家に帰る途中の閉店間近の菓子屋に飛び込んで、パウンドケーキ買った。美味しかった。
3月9日(木) 何年振りかで会社飲み会、係員だけなので7名だしいつもの自席でのノリとほぼ一緒だったので、乗り切れた。しかし帰宅すると21時近くて、もう寝なきゃな感じでツライ。
3月10日(金) 相変わらずバーカバーカと愚痴りながら仕事をし、カレー食べて胃の底からパワーが立ち上がって、新譜買って、本屋のギャラリーで見たイラストが素晴らしくて、帰り道の木蓮が咲いていて。ああ、生きることは嫌になること多いけれど、嬉しいことだってある。嬉しいことをきちんと掴まえて生きよう。
3月11日(土) 晴れてあたたかな朝、木蓮が輝いている。お昼は鰯とレモンのパスタ・菜の花とうるいの生海苔ジュレサラダ。苦味と爽やかさで春の味。そのあとはずんずん歩いて、デミタス飲んで休憩して、また歩いて、最終的に12キロ。こんなふうに晴れた空の下歩き続けたり美味しいものをいただけることに感謝する。
3月12日(日) ちょっと曇りがちな空にホーホケキョが聞こえた。/ タスクを消し込むように街を巡って歩行距離11キロ。古本屋で楽しい本を見つけたり、個展見に行ったら作家さんがいらしてお話し伺えたり、以前クッキー買った作り手さんに美味しかったと伝えることできて嬉しかったな。
3月13日(月) 木蓮は一気に咲き誇り一気に散ってしまった。/ 細野晴臣さんのラジオでゲスト小山田くん。楽しげな声で嬉しかった。YMOが「BGM」制作時にロンドンにいるトシ矢嶋さんから送ってもらってた「当時の新曲カセット」の話がよかったなあ。「これ聞くとBGMが影響を受けてたってわかっておもしろい」っていうの、ぶわっと当時の空気が立ち上がってきて泣けた。
3月14日(火) 会社帰りに伊勢丹新宿店の英国展で"おいしそうな顔"をしているスコーンを買う。/ 「ブラッシュアップライフ」、連絡を取る地元の友達がひとりもいないし世代差もあるので、こういう世界もあるのだなあと思いつつ、Y氏と笑いながら見ることが出来るこういうドラマは必ず1つはあって欲しい。
3月15日(水) 昼休み、お弁当もって公園へ。木蓮は散り始め、桜が少しづつ咲き始めた景色の中に広がる光は柔らかくて春の色。
3月16日(木) 友人から久しぶりにメール。このところ年賀状のやりとりだけだったからうれしい。「10年ぶりにライブ行った!そのとき以来のアークティックモンキーズ!」「LINEやってないし、いまだにガラケー」相変わらずでそれも嬉しい。
3月17日(金) カレー食べてレコと花買う、今夜は金曜日。にしてもヴィロードのライブには驚いたよ・・・
3月18日(土) 朝から雨で肌寒い。乃木坂駅出発 TOTOの本屋→ミッドタウンとらや ギャラリーにて「和菓子の食品サンプル」 → タカ・イシイ にて 掛井五郎展
www.takaishiigallery.com
掛井さんの個展がこの手のギャラリーでやるなんて。油絵も彫塑もいつみても掛井さんの顔がエネルギーいっぱいに溢れてて、お話伺ってるみたいで泣ける。
→ NICK WHITEにて 安藤瑠美「tokyo nude」
www.haconiwa-mag.com
ひと気のない東京の風景のこのフラットさは、窓の映り込みや広告看板などを消し込むことで強調されていると知る。お仕事がアマナのレタッチャーだそうで納得。インテリアショップの狭い中だったので、広い場所で見たい。
→ ずっと雨だったけど渋谷まで歩いた。
3月19日(日) 晴れた!仙川の東京アートミュージアムにて 掛井 五郎 展「哀歌」 ヨハネ黙示録をテーマにした20m超の絵巻物。永年積み重ねてきた祈りが込められ、安藤忠雄によるコンクリート建築のこの場が教会のようだった。
東京アートミュージアムウェブサイト 展示内容
不思議な縁に出逢いながら国分寺崖線沿いを歩き、咲き誇る木蓮に咲きはじめた桜などを見上げながら歩行距離12キロ。
3月20日(月) 明日は祝日だし、会社帰りに行こうとGoogleカレンダーに入れてたリバイバル上映2本、どっちにしよう?と悩んでたのに、やっぱり仕事終わりに映画は無理。気力無いし気持ちが切り替わらないし、寝そう。/ ウチでだらだらとY氏としゃべったりするのが楽しい。
3月21日(火) 祝日。お彼岸。起きた頃は陽の光を感じたけれど陰ってきて、10時前に家を出て花曇りの下ひたすら歩き、13キロ。何かとふあふあしてる世の中と離れて、自分の時間感覚で自分の空間を歩いた実感がある。
3月22日(水) 会社で「普段は野球なんて見ないけど」と言いながら盛り上がっている人たちの輪には入らず沈黙。すごいすごいとふあふあしてる雰囲気が苦手。/SIDE CORE「rode work ver. under city」許可とるの大変だっただろうな…という上映場所の勝利。故に映像にもっと強度あるショットと運動(敢えてこういう表現しました)が欲しくなるところではあるし、サイトの説明が「テキスト」だなあと思えてしまう。
SIDE CORE「rode work ver. under city」 - シビック・クリエイティブ・ベース東京 [CCBT]
3月23日(木) 雨の1日。会社休んで、SCAI THE BATHHOUSE 「宮島達男/Numerical Beads Painting」→ アーティゾン美術館「ダムタイプ|2022: remap」「アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ」「画家の手紙」→ OFS GALLERY「服部一成展」どれも素晴らしくて書き留めたいことたくさんあるので、あらためて書く!
(追記3/25)
www.scaithebathhouse.com
スカイザバスハウスに向かう途中のお寺の桜と地面の花弁を見たあとだったから、重なった。これまでとは異なる作風にも驚いた。90年代初頭にパリで購入した数字ボタンが30年を経て作品に昇華するという「時間」も、宮島達男の表現そのものと思えたし、今鮮やかな変化を生み出せることが素晴らしい。
www.artizon.museum
音の森を散歩するように1時間ほど過ごすと、先程見た空間が変化していたり、新たに発見したり、そんなことが楽しかった。瞬間消費が跋扈する今の世の中で、目の前に与えられた10秒ほどの「コレ」だけで完結するのではなく、「ダムタイプ」という概念を時代や世代を超えて流動的なメンバーで表現し続けるということが面白いし、チームラボ的なわかりやすさではないところも含めて、長年続けてきた人たちの意志を感じる。
3月24日(金) 昼外へ出ると曇りがちだけどだいぶあたたかく、ビルの谷間に桜が咲いている。/ 朝体の奥がなんとなく気持ち悪く、仕事中は忘れてしまうけれど、退社後はふたたびその感覚がぶり返す。
3月25日(土) 雨の1日、寒い。冬の格好で外出。夕飯はY氏と馴染みの店に行くことが決まっていたし雨なので2人で映画「シン・仮面ライダー」を見た。楽しかったー。本家のアホっぽいとこが継承されてたのが好き。でも映画じゃなくてテレビシリーズで良かったのでは。映画的なショットや動きが皆無だったし・・・毎回平成ライダー主演俳優を怪人役にて遊ばせるとか・・・(それならオダジョーも出るでショ)
3月26日(日) 今日も冷たい雨の1日。喫茶店で本を読んでいたらY氏が来たのでビックリした。お互い別々に行く店だったので店主さんに「え?お知り合いですか?」と聞かれて返答したら驚いていた。そりゃそうだ。「お二人ともいつも本読んで過ごされるお客様なので、似てるんですねやっぱり」と言われるなど・・・
3月27日(月) 無責任な係長の代わりに休日出社する羽目になり、腑が煮え繰り返るとはこのこと状態。エロイムエッサイムエコエコアザラク〜禿げろ〜〜と早退するアイツの頭に向かって呪いをかけた。
3月28日(火) 今日も雨で寒い。フッと脳内を怒りが支配にしてしまうので、このままでは病んでしまう。とここに文字で綴るとマジでヤバい感じに思わせてしまいますね、すみません。/ 父に電話。最近お店をこんなふうに考えて変えてみてるんだよ、若いお客さんも増えてきて嬉しいと話す80歳の言葉を我が社の50代オッサンたちに見せ付けてやりたい。
3月29日(水) 怒ってるままではダメなので、係長からの指示と業務の問題点を課長に伝える。課長の返答はちょっとズレてるけど溜まってたモノが抜けたかな。伝えることは大事だと痛感 / 昼休み外へ出るも、思ったほど晴れてはいないけれど桜咲く公園を歩く。
3月30日(木) 早めに会社ビルに着き、まだいいかなとビル裏手の公開緑地でひと休み。植栽の桜には歴史を重ねた風情はないけれど薄い青空に広がる色彩とふわり舞う花弁の光景は美しい。少しひいやりした空気に鳥の声と車の走行音が重なり合う。しばしぼーっとして、さて仕事だ。/ 夜、吉田豪さん「90年代前後、西新宿に存在した輸入レコード屋の店内BGM」プレイリスト(→
「CITY CHILL CLUB」3月29日(水)のプレイリスト | トピックス | TBSラジオ FM90.5 + AM954~何かが始まる音がする~ )を見ていて、Mary Lou Lordとジョンカニくんが当時のリアルを感じさせるなあとか、sammy大好きなんだよなーっと何となしに調べたら、sammyのヒトのインタビューを見つけた。Beatsってあのヘッドフォンかー!ええー!こんな大御所になってたの・・・。2020年のこの記事、全然知らなかった。しかも「91年からGEFFENでSONIC YOUTHのプロモーション担当として働いていた(でシェリーさんにデモテープ聞いてもらってデビューに至る)」ってのすら知らなかったヨヨヨ。
www.vice.com
3月31日(金) 年度末、ちょっと残業しちゃったけど、馴染みの店でご飯食べる。来年度も金曜の夜をこうやって過ごせる1年でありますよう。
4月1日(土) 係長の無責任により(何度も言う)休日出勤も午前中に終えて、暑いくらい晴れた中を桜と新緑を辿るように歩いた。途中のレコ屋で「ダウンバイロー」のサントラレコードを見つけつつ、好きなお店で庭を眺めながら休憩。帰宅するとY氏が上生を買ってきていた。繊細な美しさのなかにクッキリと存在感を残す餡が衝撃的な美味しさだった。
4月2日(日) 今日は少し曇り気味、午前中は肌寒かったけど午後は晴れ間も覗き、まだマシに。桜と給水塔を見に行った。
明日から会社は新年度。