3月の終わり、4月の初め

弊社の人事異動発表は例年3月最終金曜日で、下々はその日に「初めて」知らされ、僅か数日で引継し荷物をまとめるという大作業になる。部署によって都内とはいえ勤務地が変わることもある。私は珍しいほど長年残留だけど、我が係に特有の年度切替業務がテンコ盛りで、疲弊に疲弊を重ねるのである。サテハテ今日5日から書き始めて次月頭にアップする頃に、私の精神はどんな浮き沈みをしているのか今からドンヨリ。ついでいうと、ヤマジさんの誕生日が3月25日で、その日はライブ確定なんですよ。毎年死ぬ思いである。




3月5日 昨日の夕方から続く頭痛は朝もあり、天気のせいだねえ・・・。たいてい仕事行くと強制的に頭と感情が回るのでいつも通りに過ごすことになるのであった。/ ヤマジさんが"まあまあ良い音の音源を沢山残した方が良いと思う"と書いたので、それならばライブ録音盤をリリースすべきでは!!と机を叩く勢いでエアーへ叫ぶ。勿論ライブだけで販売のCDRじゃ駄目。Bandcampでいいじゃない・・・。でもヤマジさんは「自分用」としか考えていないし少しでもミスった音が残ることを嫌がるだろう……



3月6日 確かに「街の書店」は減った。反面でセレクトを売りにした書店が増えたものの似たような品揃えだったり、イベントありきが目立つ。ネット前提の世の中で「街の書店」はどこまで必要なのか。本単体で成り立つことが必要で、消費税非課税にするとか仕入れの仕組みを善処するとか、国として出来ることしてくれよ……と客として思うことは店側の実感とはズレてるかもだけど、裏金を書籍代に使ったと言い訳する人たちにお膳立てされてもねえ。にしても。「創造性が育まれる文化創造基盤」は図書館とか書店とか、本ばかりなのね。輸入の仕入れ苦しいレコード屋も映写機器デジタル化が困難な映画館もよろしくお願いしますね……
齋藤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要 (METI/経済産業省)



3月7日 サブスク堂でPREFUSE 73を紹介(!!!)後は言葉少な(な編集)だったけど、最後にロックとはと静かにアツく語りザゼンかけた松重さんサイコーだ。ナンバガザゼンも熱心に聴いていない身だけに改めて思うのは、聴き手に押し寄せる冷めた熱きモノがあってなんだかわからないけどスゴイって伝わってくる。カッコつけない、衒いない、人としての器がたくさんのファンを産むのだろうなあ。



3月8日 朝起きると外は雪。帰宅時はそんなこと忘れてたくらいに雪もなくあたたかな夜。

夕飯をいただいた馴染みの店の本日のメニューの鰆を食べながら、BGMのヴェルヴェッツ3rdは寒いのかあたたかいのかよくわからない空気によく合うなと思った。



3月9日 晴れたけどとても寒い!冷たい風が強くて歩く気になれない。Y氏とお昼ご飯食べて、レコ屋回って、本屋寄って、その間にコーヒー飲んで。お昼食べた店にいた人と喫茶店でも一緒になったり、最初行ったレコ屋にいた人が後で行ったレコ屋にもいたり、回遊の輪が共通してて面白かった。/ 夜ご飯は豚汁にしたけど、自分の料理下手さに泣く。なんで美味しくないの・・・



3月10日 はてなスター付けられなくした。今迄は回覧板のハンコだと思ってたけど、わけわからん謎の押しまくられに萎えた。長年使ってるけど、風土がすっかり変わったよねえ、はてな。/ 毎年楽しみの大好きなフレジェを食べたところ、ズトンと胃に重さを感じ、そうかフレジェももう駄目か。生クリームも駄目なんだからムースリーヌなんてそりゃ無理だよねえ……今年が最後のフレジェ。



3月11日 この日付を見ると心の奥にぐっと落ちるものがある。想いを馳せて私は今日も生きるのだ。/ 詳細不明ながらY氏が録画してたこの番組、素晴らしかった!ブラジルのジョイス・モレーノが来日公演時にHMV渋谷でレコード見ながら好きな音楽についてじっくり語る、愛ある番組。ジョイスがこんなふうに語ってくれるなんて信じられない!
www.fujitv.co.jp
視聴後気付いた松永良平さんの言葉によると、プロデューサーの黒木彰一氏は『こんなに最高なミュージシャンが世界にはいて、ぼくらとそんなに変わらない青春や人生観、音楽観を持っているんだ。だから先輩たちの話を聞いておくべき』と企画し実行したようで、その意志と愛情がそのまま番組に反映され、私は言葉にならない何かを感じ取った。テレビ番組にはうんざりすることばかりだけど、真摯な心でつくられた番組が視聴者に届けられることに感謝したいです。過去作は下記で視聴できるとのこと。
COFFEE AND DONUTS #1 Marcos Valle - YouTube
COFFEE AND DONUTS #2 XAVIER BOYER - YouTube
COFFEE AND DONUTS #3 RON CARTER - YouTube



3月12日 頭が痛いとか怠いとかではないけど、気力が出ない朝。やる気なくて今朝も会社行くのヤダなーと思いながら冷蔵庫にお弁当の準備してるしなとか休む連絡するのめんどくさいなと思って通勤電車、会社行けば「明るく元気なヒト」の着ぐるみ被って接するんだから、トホホだよ。



3月13日 Jeff Mills x Jun Togawa - 矛盾 アートマン・イン・ブラフマン(Radio Edit)「あーヤマジギターだなあ」って音色、そういう個性はどういう部分で表出するものなのだろうかと不思議でカッコいい。御本人曰く『ボ・ディドリーの感じと云う指定があり、試しに宅録して送ったギタートラックがそのまま採用となった』とのこと。(なのでたぶんちょっと不本意なのかも)
youtu.be



3月14日 定時ぴったりで退社、通勤経路と異なる路線に乗って下車した駅近くの喫茶店で早めの夕飯を食べて、紅茶を飲みながら読書してから家まで30分くらいの道のりを歩く。明かりが灯る家々の街並みは休日の昼間に歩くときと雰囲気が異なるし、どこからか沈丁花の薫りがして、木蓮の白い花弁が夜空に映えて美しかった。たまにはこんな、いつもと違う帰路の夜も良いな。



3月15日 会社帰り行こうとした街へ向かう電車を乗り間違えて、戻るのもなーと考えて下車し、歩くこと30分強でたどり着いた街の喫茶店で紅茶飲んで、電車乗って帰宅。こんな遠回りもある。



3月16日 晴!春!ウワーイ!と外に飛び出し、お家ギャラリーへ。ここの空間大好きなので開催時は大抵行っているのだけど、今回が初の本格的な個展という森岡さんの作品は、以前カフェで見たことがあって好きだなあと思っていたからこの繋がりにびっくりした。くすんだ色味の組み合わせがセンスあって素敵。 openletter.jp

そのあとは散歩してあったかくて気持ち良いな〜〜ってホケ〜〜。途中のカフェで食べた日向夏のタルトは土台の生地がとっても美味しくてホケ〜〜。また歩いてレコ屋でレコ買って、チューリップ買って、ホクホク顔で帰宅。夕飯は開店直後のスーパーで買ったキビナゴ・ホタルイカ・アジのお刺身。美味しい。春!



3月17日 先週日曜と同様に、夕飯の準備を終えてから近くに出来た喫茶店へ17時に行く。空の明度が落ちていくのを白いカーテン越しに感じるのが良い。/ TVKTMGE特番、ステージ上の熱量の高さ強さ、ライブで演奏することが好きだーって想いが「直結」でこちらに突き抜けてくるのがやっぱりすごいなー。ウエノさんのベースもクッキリ主張してて最高。(某バンドを脳内に浮かべながら・・・)



3月18日 ヤマジさんが細海魚さんとのデュオでまさかの東北ツアー、仙台のみなさま!dipじゃないけど行って〜〜。そして「dip
で来てください!」とアツく伝えて〜〜。弘前の会場がれんが倉庫美術館というのも驚き。私が弘前を旅したのはいつだっけとココ見たら2014年、10年も前なんて。当時はまだれんが「倉庫」だけで写真も撮ってた。私も東北ツアーしたい。



3月19日 いってきます、と外へ出たらホーホケキョと鳴き声が聞こえた。春。



3月20日 ユーロで「すべての夜を思い出す」を観た。私の穿った感覚ゆえ素直に吸収出来ず。観終わると外は降っていた雨がやみそうな感じ。帰宅後夕方に雷、強風。春の嵐



3月21日 内示出て遂に異動。。。



3月22日 正式発表された後、異動先の建物にいる人たちから「待ってるよー」とか「遂にだねー」などと電話を貰ったり、異動先の上司は派遣時代の10年以上前の私を知っていたりとか、外から見た自分を感じてびっくりした。帰りに寄った喫茶店、もうなかなか来ることはないだろうなと思いながら流れる細野晴臣の歌声と珈琲と抹茶ケーキのほろ苦さにぐっときた。



3月23日 飲食店はオペレーション大事なのと決め打ちメニューは私の胃の許容量を確実に超えることを実感。



3月24日 渋谷。何か違和感が……ああそうか、東急本店が消えていた。向こう側の階段はまだあったからホッとした。こことかヒルサイドテラスとか、一頃の場には裏にひっそりと休める空間がある。最近の再開発のように明るくて賑やかで両手を広げてる空間ではない、曖昧で静かに潜むこの感覚も消えませんように。



3月25日 またしても六本木再開発、今回のエリア内の国際文化会館は、建替話が保存決定し耐震含めた改修したのは2005年、その後アレコレあったからどうなるのか……概要では「地上3階立」とあり、別記事に「既存の国際文化会館・旧岩崎邸の庭園を保全」とあったけど、、、どうか永く継承されますように。
取り壊しの危機もあった貴重な文化遺産。<国際文化会館>の建築を巡るストーリー。 - Sustainable Japan by The Japan Times
仕事は私ホントに異動して大丈夫なの?ててんやわんや。そんな状態で業務委託事業者にイライラさせられる。まあ、残った人が頑張るし、変わっていくのだろう。と思いながらの夜は高円寺でdipライブ。全然集中できなかった・・・



3月26日 土砂降りの中、異動先の事務所へ行き業務の引継を受ける。予想以上に頭が混乱不安でいっぱいに。それでも仕事は回っていくものなので、なんとかなる、だろうか・・・/傘がさせないほどの雨がダメ押し、作る気力ゼロのためデパ地下でコロッケ買う。揚げ物じゃないものが食べたいけど選択肢がない。



3月27日 会社のデスクを片付け始める。シュレッダーにガンガン放り込む。ずっと取っておいた資料ばかり。



3月28日 今年は歓送迎会フル体制になり、都合3回は出席必須なのがツラい……飲まない食べないシラフで喋って盛り上げなければならないこの身よ……



3月29日 激しい雨で頭も痛いが今日で現係最終出社。段ボールに詰めた後に入れ忘れに気付いて別便にしたりダメダメである。異動の多い弊社で珍しく10年以上在籍した係だけど、意外に感慨深くならなかった。私は異動初めてだけどみんな何回も経験済なんだよな。退職じゃないんだし、厳しく接し続けた業務委託先の各担当者には挨拶はしなかった。どうせ嫌われてるだろうしねえ・・・



3月30日 よく晴れた!しかしY氏が「空が黄色い」と憂いている。外は暑いくらいでシャツ1枚で充分だけど、桜はまだ咲いていない。久々の表参道はパン屋の行列が100mは続いてて、アホか。
スパイラルにて 清水正己 カルチャー誌デザイン展 “されど雑誌たち”|東京 青山 表参道の複合文化施設スパイラル CUT、ROCKIN’ON JAPANSTUDIO VOICEなどを手掛けた清水さんの展示、“されど雑誌たち”というタイトルに想いを感じる。入った途端に飛び込むこの光景に立ち尽くした。

ああ、90年代頭に田舎で見て、強烈な憧れを抱いたこの感覚が「カッコいい」と私の心身に刻まれたのだとつくづく思った。「カッコ良さ」は流行り廃りがあるものの、心身に刻まれてしまうと自分と一体化してしまうものだ。清水さんのデザイナーとしてその時代のカッコ良さを常に築く仕事っぷりがスゴイ。

下北沢に移動、下北の井の頭線西口から出て北側の道を進んでほどなくあった、古着屋とか雑貨屋が集まってた古いアパートの一帯がない!うわわわわ。90年代前半の記憶の場所が次々と消えていくなあ。。。


ちょうどいい、どちらでもない、そんな感じが天候から消えたから、人もそんな感じになってしまったのかな。この世はなんでも極端すぎる。
ギャラリー、カレー屋、古本屋、パン屋、喫茶店と途中立ち寄りながら歩き続けた。楽しい1日。



3月31日 午前中は経堂五丁目特別保護区へ。ちょうど桜が見頃。神代曙という品種だそう。

ここから小田急線で永山へ。界隈を散歩しながら旧多摩聖蹟記念館見学会へ行く。前回は5年ほど前、分離派の展示で蔵田周忠によるこの建物を知って行った以来。今回は解説していただきながらで発見と楽しさに満ちていた。
旧多摩聖蹟記念館春季企画展「多摩聖蹟記念館と建築家・蔵田周忠」|多摩市公式ホームページ



4月1日 今日から新年度、勤務地が変わって通勤がかなり楽になった。なにをどうしたらいいのかわからない状態ながらコツコツと行なう業務はこれまでと正反対な環境。とりあえず1ヶ月がんばろう・・・



4月2日 異動先の事務所でいろんな人からお声がけいただいてありがたや。しかし仕事は先が見えないままである。/ 会社帰りに下高井戸シネマへ。ケリー・ライカート「オールド・ジョイ」を観た。良かったという想いを言葉に出来ないのは、この作品自体が言葉に発することの出来ない感情を緑の中の光と鳥の鳴き声とともに丁寧に描いているからだろう。



4月3日 手順書もない業務で気軽に聞ける人もいない状況下でする仕事なんて、本来の意図は消え失せ、ミスが生まれるよねえ。とかウチの会社はそんなにヤバい人いるんだな(各部署で回し合うほどに)などと思いながら、仕事。



4月4日 胃痛であまり食べられない。/ 私が他部署へ依頼する業務はよくわからないまま行なっているのだけど、依頼される側の人もよくわからないままやっていると知る。/ 午後は半休。神保町へ久々に行く。

スヰートポーヅ と ろしあ亭があった場所。
漢方内科で脈の緊張と胃の硬さを指摘される。なんてわかりやすい身体よ・・・。



4月5日 なんとか1週間が終わった。この不安感はいつかそんなのこともあったね〜〜と笑える日が来るのだろうか〜〜と唄いたくなるね・・・/ 下高井戸シネマにて「ウェンディ&ルーシー」、どんづまりな1週間の最後にどんづまりな映画を観るとは。先行きの見えない道のり。でもいつか、ルーシーの元へ戻ってくる日が来ると思える。こんな境遇を描く映画は多いけれど、辛辣でも道化でも荒んでもいない、ケリー・ライカート監督の品性あるまなざしに救われる。口笛吹いて明日も生きるよ。/ いつもと違う帰り道、小学校前の桜が咲いていた。どんなことがあっても花は咲く。




それにしても冒頭に書いたことが懐かしい。1ヶ月振り返ると、雪降ったなあなどと思い出す今日は桜が満開だ。うまくバランス取って仕事も好きなことも無理なく楽しめたなあと思える1年でありたい。

継承

 昼間の日曜下北沢。茄子おやじは長蛇の列。信じられない光景。かつてはふらっといつでも入れたのに。
前店主から引き継いだのが2017年、ブラッシュアップしたタイミングと下北の変化がマッチしたなあと思う。下北の変化といえば小田急線が地下になり、線路跡に出来たボーナストラック開業が2020年。コロナ禍を経てメディアで取り上げられることが多く、街を歩く若者がほんとうに増えた。古着やレコードが流行ったことも大きい。
下北沢の再開発は本当に正しかったのか? 新しい街が完成して1年半、今こそ「ノスタルジー」「思い出補正」を超えた議論が必要だ | Merkmal(メルクマール)


下北はカレーの街なんていわれるようになったのはイベントの力もあるのかな。キッカケのひとつである「カレーの惑星」が出来たのは2016年で、カレー屋の形態が変化した時期とも重なっている。独創的なメニュー、古い店舗を使い、間借り営業や曜日ごとに違う店主という形態は今でこそよく見られるようになった。


1990年に開業した「茄子おやじ」の味は前店主が働いていた吉祥寺の「まめ蔵」経由。1978年に絵本作家の方が開いた店。そんな歴史を知ると、茄子おやじの店内やカレーに納得感。
下北沢のカレー店「茄子おやじ」が20周年-「あっという間だった」 - 下北沢経済新聞

若い頃からよく行っていたけど、いつの頃か胃に重く感じるようになり頻度が落ちたなか、店主交代直後にも行って、店内の変化が感慨深かったな。変わらないけど変わっていく、素敵だなと思う。
下北沢カレーの名店『茄子おやじ』。レコードの音に満ちた空間で奥深いスパイスに溺れる|さんたつ by 散歩の達人



 最近とある街にオープンしたカフェは、閉店したカフェのレシピや椅子を引き継いでいる。「全く関係ない仕事してたんですけど、閉店するとしって居ても立っても居られなくなって」と語る店主はいつもにこやか、静かな店内にやってくる客もみな落ち着いた方ばかりで常に良い雰囲気なのが嬉しい。それは引き継いだ元のカフェもそうだった。有名店を「コピペ」したりネットの写真を見て殺到するカフェも多いけれど、店主が店をつくりその空気に惹かれた客が来るのだ、とあらためて思う。



 先ほど、テレビで100年続く和菓子屋の3代目がつくるショートケーキが人気、と紹介していた。3代目が使う業務用ミキサーと2代目が白餡を炊く餡練り機は、ああ実家にもあるなあって胸の奥が痛かった。餡を捏ねる80代後半の2代目の後ろ姿は父と似ていた。まだ20代の4代目が頑張っていた。次世代に継承されていくのだな。
その後その番組では高齢女性が1人で切り盛りする食堂を紹介した。しんじられないほど大盛りの品々を提供しながら「儲けなんてないの!バカみたいでしょ?でもみんなが喜んでくれるから」と高らかに笑う店主は、第一に健康で、困らない程度の生活費を持ち、日々やってくる常連との交流がモチベーションなのだろう。



 店は店主そのものだ、だから店の数だけいろいろな「生き方」がある。だから店にも寿命がある。時代はますます変化し、昔のままではいられない。その寿命を継承することで違う姿で生き続けることも出来るのだ。いろいろ考えてしまうよ、ねえ。