「ペコロスの母に会いに行く」

木曜日だけど珍しく映画を見に行く。森崎東監督、御年85歳にして久々の新作はほんとうに素晴らしかった。私がナントカ云うのもおこがましいけど、見事で圧倒させられた。
息子と母親、現実と記憶と幻想と、過去と現在がそれぞれ行ったり来たりの構成がスムーズに繋がっていく。何かをしていてふっと思い出したことがそのまま映し出され今に返っていき、母親・息子そして孫に繋がっていく。それにまつわる美術や小道具が見事で溜息。
ラストのくだりでは、ウワー!ってぞくっとしてしまった。
監督と同じく長崎出身の岡野雄一氏が認知症の母親との日々を描いた漫画が原作で、重くなる話題なのに「喜劇」であり、こんなかたちで映画化出来るのは森崎東監督しかいないかもしれません。
どんな経緯で監督することになったのかわからないけれど、映画作家としての自分の色をしっかり出しつつも(ベタな笑い等アレコレ含めて)、商業映画として「あらゆる方向」に向けてキッチリと仕事がなされていて、まさに職人技だった。スポンサーへの配慮にもビックリ、映画製作が困難な時代に折り合いをつけながら制作側の意志が感じられ、作品のテーマにも繋がっているように思えました。そして観光映画としても暮らす人々の視点で映し出されていることが素晴らしかった。2年前に旅行した長崎を思い出し、また散歩したくなったなあ。素敵な街*1
登場人物が長崎の街にちゃあんと生きている。この2時間あまりだけ生きているのではなく、長崎という街の歴史とそこで暮らしてきた足跡がここにある。
渋谷のユーロスペースで見たけど、全国的にはシネコンでかかっているのかな。こういう映画が大ヒットしてほしい!

*1:→「長崎旅日記」、坂の街路地の街猫の街など!!