damon&naomi at o-nest:渋谷

前座は馬頭將器さん(ghost)とHelena Espvallさんのデュオ。Helenaさんはチェロ奏者で、今回は彼女の祖国スウェーデンの民謡を演奏、北欧の暗く重く澄んだ風土を思わせる楽曲は哀しくも美しい響きだった。今度ドラッグシティから2人名義のアルバムが出るらしい。

さてdamon&naomiが登場。
壇上のdamonさんの白い髪の毛が弱々しくふあふあと宙に浮かびギターがのっかったおなかはぽっこり膨らんで、ああ歳取ったなあ、、としみじみとした。naomiさんはハードなブーツにオフホワイトの薄い布を重ね合わせたアシンメトリーなワンピース姿がとっても素敵!でガーリーな装いが良く似合う聡明な大人の女性だった。
そんな2人とギターの栗原道夫さん(the stars)と馬頭さん、チェロのHelenaさん、ソプラノサックスのBhobさんを交え2時間に及ぶ演奏の中で私は6度も泣いた。

damonさんの全体の音に耳を澄まし舵を取るようにアコギの弦を振り下ろす手の、音を慈しむようなしぐさや、唄うときの切なそうなのに幸せそうな表情や、damonさんのMCの話題ひとつひとつにたおやかに微笑むnaomiさんのやわらかい表情や楚々として凛とした歌声やベースライン、そして2人の声が重なり合うことで震える空気、これらに触れたときに泣いた。
そして栗原さんのギターの音色、このところの彼らの楽曲における深遠な世界は彼のギターによるところが大きいのは言うまでもないのだけどそれを改めて痛感したのは昔の曲を演奏したときで、後半のギターソロの透明な地平の奥底から静かにぐわああっと立ち上ってくる響きにも泣いた。
この「泣く」というやつは、おなかがぼわっとあたたかくなってそれが鼻に伝わってふがふがと熱を持ち、それから目尻がじわあっと緩み、からだ全体がふわっと浮かび上がるような感覚になるもので、なんとも形容し難く、こんなものが幾度もやってくるのだから参ってしまった。

最近の音数が絞り込まれた曲では磨きがかかった音色が繰り出され、過去の曲では丁寧な唄を支えるしっかりとした音色が繰り出され、音がとても繊細に練りこまれている事も印象的だった。

フロアの半分にはパイプ椅子が並び*1、その後ろの立ち見部分はドアまでぎっしりと入る盛況ぶり、恐らくは10代のころからギャラクシー500を聴き続けてきた人たちばかりで(あの「解散の為来日公演中止」という新聞広告に愕然としたような)、彼らの音と共に重ねてきた月日を噛み締めながら今、こんなにも素晴らしい演奏を聴くことができて幸せだときっと誰もが思ったことだろう。

Y氏と良いライブだったねえ!とにこにこと話しながら道玄坂を降りる途中おなかぺこぺこだったので中華屋に入り、あんかけが下に隠されたカリカリ焼きそばやら五目つゆそばやら餃子やらをおいしいなあおいしいなあとガツガツと頬張りぺろりと平らげてしまった。うん、幸せな一夜だった。

*1:入った瞬間「座って見れる・・」とホッとした。彼らの音は座って落ち着いてじいいっと聴きたかったから。