赤木仁 展「モンパルナスのリス」〜 目で聴くコシミハルの音楽

コシミハルさんのアルバムを初めて聴いたのは「Passepied(パスピエ)」。

通い始めたレンタル店でこのジャケに惹かれた私は、背伸びして大人の世界を覗いてしまった気持ちになったものです。「星に願いを」だとか聴き馴染みある楽曲が「子供向け」ではなく、優雅に且つかわいらしく、鳥のさえづりのような声で唄われていて、その世界感は私にすっと入って来たのです。
更にコシさんのお姿を写真でお見かけし、憧れました。ベリーショートがよく似合う端正な顔。そう、私はベリーショートの女性が大好きなのです。
その後の「父とピストル」は更に私の心をちくりと刺し、とろけさせました。

クラシックやシャンソンなどをベースに紡がれる楽曲は、私を遠い昔のヨーロッパのどこかの国へ連れて行ってくれました。幻想的で、品があって、凛々としていて、かわいらしくもありどこか不気味でもあり、そこから滲み出る耽美的な薫りには背徳感が漂い、禁断の密やかな空気に満ちている。戯れるように唄い、儚げに彷徨い、しかし芯は細くも強靭で、弄ばれてしまう。食べちゃいけないキャンディみたいな音。
そういう世界には、どうしても惹かれてしまうのです。
はまぞうに画像がなかったので別途アップしました)
http://www.myspace.com/miharukoshi


そんなコシさんのアートワークを担当する赤木仁さんの、「1987〜2008の20年間に渡り音楽家コシミハルの仕事に寄せて描いた、油彩、水彩、コラージュなどの原画約200点を展示」した展覧会。
会場内にはコシさんの曲がかかり、ぎっしりと並べられたおびただしい量の作品はどれも愛らしけれど毒を秘めている。
サラサラとした筆跡で踊るように描かれた女や動物たち。鉛筆書きの悪戯みたいな絵。筆で軽やかに描かれたリスやウサギやキリンたちは絵から音が溢れ出すように楽器を演奏し、その傍らで中世の拷問器具で無邪気に遊んでる。ああ、なんとも魅惑的。
そんな絵に囲まれていたら、植物園の中の温室に閉じこもっていたあのころの私がやってきて、泣きそうになりました。


今回の展示のHPでコシさんは

仁さんの絵は可愛くて悪戯で、耳の後ろでヒュッと鞭の音が聞こえてくるような独特のユーモアと、曖昧さを蹴散らすウサギの陽気な後ろ足が見え隠れするパンクな感じが、わたしはとても好きです。

とコメントをよせているけれど、それはまさにコシさんの音楽であり、赤木さんの絵はその独特の世界に共鳴していて、とても素敵なコンビだなあ。
赤木さんの絵本もなんとも愛らしい。

AZUCHI あたまいっぱいの鹿

AZUCHI あたまいっぱいの鹿

感傷的なきもちを呼んだのは、原宿の外れの、時間が止まったような場所のせいもあったかもしれません。
リトルモア地下にて。http://www.littlemore.co.jp/chika/event/