AFTER LOUD

AFTER LOUD

AFTER LOUD

ナガタさんがベースとして復帰したニューアルバム。
ヨシノさん時期にプラスされた「幅」にナガタさんの「強さ」が合わさって、エンジンが変わったかのよう。
ヤマジの好きな音を散りばめた、曲ごとにポップでロックで、一辺倒にくくれない所は今まで通り。とはいえ、これまでのライブレポで書いたように新曲には明るい光を感じるところがあり、過去の曲も感触が明らかに変わって、今までと違う!と思っていたけれど、まさにそれが「カタチ」になったアルバムです。

これまで、芯を見せないかのようにブワーっとかぶせまくっていたものが洗い流されて、ひとつひとつの音がクリアに聴こえることにまず驚きます。
セルフカバーの2曲を聴き比べればわかりやすいですが、dipの専売特許というべき?「鋭利で繊細で不安定で歪んだ」感触は弱まっています。これまでは、失礼な言い方をしてしまうと「偏執狂」というべきコダワリでガチガチだったと思うし、私もその部分に惹かれていたと思いますが、ようやく解きほぐれたというかなんというか。枯れたとも違うのだなあ。
その意味で、9曲目「URA」の"軽み"ある響きにすごく惹かれます。歌詞も…!

他に好きな曲を上げると
原曲の若さ故のキリキリさが凄みに変貌した6曲目"mirrors"(dip the flag時代の楽曲)、
とろりとしたなかに切なさが佇んだ余韻が残る8曲目"sonic flow"、
反復反復具合にのっかる流麗でスリリングなギターが気持ちよい11曲目"6/8"、
そしてラストの"AFTER LOUD"。嵐が吹き去った穏やかな夜明けを迎える海の表面に、てらてらと揺らぐ光が見えるのです。
それと裏ジャケのヤマジ画伯による、エフェクターずらりのイラスト(&ヤマ字)がすごく好きデス。


さて、今回の混沌を抜けたような作風には心境の変化があるようですが、録音状況などによる影響も大きいような…。良く言えばヌケがいいけれど、見えない音をパスッとはしょった感じ。んー、ライブでの力奏を聴きなれているせいかしら…。
あとあと、"morning stars"はロボ声になってて驚いたヨ〜。ライブでは明るく「強さと軽やかさと穏やかさと切なさが同居」している印象だったんだけど、個人的にはこのアレンジはまだ馴染めない…。


ともあれ。90年代頭に結成した彼らが、ようやく「3ピース」として新たに出発したようなこのアルバムは、繰り返し聴きたくなる魅力に満ちているのです。