「一頁台北」「夜よ、こんにちは」

昼、冷えた社内から外へ出たら、その暑さに小学校の時の石油ストーブを思い出した。"ダルマ"からむううっと放出される熱に向かって歩いてるみたいだった。

帰りはダッシュして(気持ちだけねー)早稲田松竹へ。ずっと見逃していた「台北の朝、僕は恋をする」を見た。監督のアーヴィン・チェンは「ヤンヤン 夏の想い出」に感動し、エドワード・ヤンに師事していたという話しを知ったら、気になるに決まってる。で、思ってたよりかな〜り軽いタッチのラブ・コメディだったけど、ふとしたショットにどこか「師匠」の面影を感じさせたりもした。不動産屋の甥っ子君の愛嬌のある胡散臭さが気になっていたら、エドワード・ヤン映画にも登場してたクー・ユールンですって!びっくり!あと、本屋の店員役の女の子、アンバー・クォがかわいい!ドゥナちゃんが遠〜くに行ってしまった今、彼女のフツウの愛らしさにホッとしますです。それにしても邦題がひどすぎる。原題は「一頁台北/Aure Voir TAPEI」ですって。 

それから吉祥寺バウスへ。「夜よ、こんにちは」の爆音上映。凄まじい映画だった。張り詰めた緊張感に満ち、濃密で重厚だけど端正でしなやか。冒頭、登場人物の背景が判る件に雪崩れ込むところでもう、ノックアウト。視線視線視線、その強さ重さと均等の質量で音が鳴り響く。Pink Floydの使い方がめちゃくちゃカッコヨカッタ!「爆音」といえどもバランスが良くて、爆音だからこそ見えないものが聴こえ、この映画の持つ力を引き出したように思えた。史実を元にしたストーリーで、私たちが「知りえない」彼らの揺らぐ心の描き方も素晴らしいし、そのむこうに浮かび上がる「ありえたかもしれない」現実の、スッと風が抜ける様に射抜かれる。そうやって私たちは突きつけられる現実に対して想像しなければならないのだと思う。