テトロと雪と寒さと古地図

金曜日、東京は雪でした。会社の窓から水分高そうな大粒の雪がふぁさふぁさと見え、そして夜。雪は止んだなか六本木へ向かい、ようやく「テトロ」。素晴らしかった。

テトロ 過去を殺した男 スペシャル・エディション [DVD]

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モノクロームの、白い光、黒い影、そのてろりとしているのにキッチリとした、端正な美しさ。
冒頭から一気に引きこまれて、終わってしばらくぼーっとしてしまった。
ブエノスアイレスの街並もとっても魅惑的だった。もともと最近のアルゼンチン音楽が好きなこともあって惹かれる街なのだけど、ちょっと散歩してる気分になったなあ。そんなにたくさん外の風景が出てるわけではないのだけども、テトロが”新しい人生”を穏やかに過ごしている街だということが感じ取れるからかしら。
ギャロの横顔の影を壁に映すなんて演出や室内のインテリアとか服装とか、若手がやればオシャレ認定されそうなところも「品の良さ」に落としこまれているのは、キャリアと年齢と日々の暮らしぶりに寄るのだろう。
音楽は特に前半部の使い方がよかったな。王道な感じと洗練された感じと。アルゼンチンの音楽作家らしいけれど、ちょっとリサンドロくんっぽい唄声の曲が使われたような気がした。
それにしても「シネマート六本木」というミニシアターで数週間の限定上映という扱いには、今の日本の映画ビジネスの難しさを思う。ただ、スクリーンサイズとしては個人的にはこのくらいが一番落ち着くし、コッポラのパーソナルな映画であるならば大仰しく公開しないでよかったのかもしれません。前作の「胡蝶の夢」も好きな作品でした。



土曜日、ひどく寒いけれどなんとか、雨。
月に一度のケーキ屋さんへ。レモンのムースが美味しかったなあ。「寒いのにさっぱりしたのが作りたくなって」と店主さんはおっしゃり、新しいお菓子をどういうものにするかをずっと考えるにあたって、何度も挫折しながらあるとき”ふと”「あ、こうすればいいんだ」と思い至るんです、というお話が印象的でした。
それから日本橋へ、三越前の地下コンコースで開催されている「地図展 日本橋五街道」をもう一度見た。昨年末に見て、とても楽しかったのです。
日本橋界隈のまちの移り変わりや、江戸時代から現代までの五街道の道筋を地図で紹介されていたり、旧日本海軍が作成した海図があったり、複製ではあるけれど見るだけでもう、興奮するのです、よ!道路や地名、都電の線路や駅、華族のお屋敷や軍用地をたどって、脳内地図や風景と重ねるのはほんと楽しい!
前回はなかったのだけど地図センターの販売出店があって思わず駆け寄りました。そこには明治時代の東京の測量地図複製があったのです。見とれていると係員のかたが親切に説明くださり、「これは”フランス式”彩色地図で、地域の名所なんかが空いているところに描いてあったりしていいんですよ〜。”ドイツ式”だと実用のみで簡素なんだけどね。」と教えてくれたその顔がとっても嬉しそうで、私もとっても嬉しくなってしまった。そして遂に、買ってしまった…!きゃー!それにしても、こんな地図ひとつとっても「お国柄」が出るのが面白いなあ。そういえば「キノコ図鑑」もフランスのは額にいれたくなるよな美しさだものねえ。。。
寒いのでちゃちゃっとおでん食べて、外を歩きたくないから大手町の地下ダンジョン(マジでダンジョン、わけわからん)を延々歩いて、帰路につきました。連ドラを2本、「カーネーション」の展開に悶え(でも周防さんにはときめかないんだよねえ)、「贖罪」に震える…。「カーネーション」は語り合いたくなるなあ、そういうの久しぶりだ。


日曜日。寒い。
東京のこの程度の気温で何を甘えとんじゃ!と叱責されるでしょうが(しかも私長野育ち…)、なにしろ気力が湧きません。なんというか「ライフ:ゼロ」状態で、なーんにもヤル気がしない。脳みそが活動を拒否しているようで冬眠状態、食欲も沸かず、音楽や映画や本を摂取する気もなく、散歩なんてもってのほか、外へ出る気がまるでない。週末の散策を楽しみに生きているこの私が…。
12時を回ってY氏が「ほら、行くぞッ」とダラダラな私を外へ出し、近所の中華屋でネギそば食べたらようやく体内から活力が湧いて来ました…。夕飯の買い物をして帰宅、午後になると明るくなりましたがまー、結局インプットする気ゼロの一日でした。ダメねえ。