風花 〜 特集上映「甦る相米慎二」

昼は比較的近くにある新しいお店にご飯を食べにいった。店主さんは大層テンパっており、それ以前に準備不足過ぎ&こういう事態になることを予想しなさ過ぎでビックリした。今度来たときにはスムーズになっているかな。でも美味しかったし人柄の良さを感じたから、頑張ってほしいなあ。

移動して毎年向かう厄よけのお寺で昨年のお礼と今年のお参りをしてまた移動。西荻、猫が木の上に3匹いた。木に登ってる猫ってそういやあんまり見たことが無い。前に見たときも西荻だった。それから吉祥寺。駅構内はまだ改装中、狭く迷路のように入り組む仮設通路で怖い。日常的に使用している方々は大変なことだろうなあ。ユニオンも改装中であらビックリ。どうなるのかなあ。

夜はすぐ帰宅せず、映画を見に渋谷へ。こんなこと殆どしないけど相米特集に行きたかったのだ。ユーロスペースにて「風花」を見た。

風花 kaza-hana [DVD]

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これまで見ていた幾つかの作品とは違い、丁寧で落ち着いたドラマだなと最初は思っていた。だけど。二人が雪深い山小屋に辿り着き、柄本明演じる主人が食堂でフォークソングを掛け合いながら唄い、小芝居(座頭市!)を披露して常連の山男たちとどんちゃん騒ぎを繰り広げるあのくだり。ああこれが日本だなあ、まさに日本の土着的な姿そのもので、逃れられないのだなあとでも言うような感じで何ともいえない気分になる。小泉今日子演じるゆり子も最初は怪訝な面持ちだったけれどその様子を酔いながら楽しみ、輪の中に入っていく、主人に誘われて壇に上がると天井から紙吹雪の雪がパラパラと落ちてくる…。その一連のシーンにぐっときて、ぽろぽろと涙がこぼれてきた。ゆり子の心の動きがオーバーラップするよな、心象が映像に表れるこういう演出がほんとうに凄い。震える…。
衣装もうまいなあと思う。ゆり子の安っぽい感じや、浅野忠信演じる廉司の細いフレームの眼鏡にダボッとしたスーツ(あの姿はまさに!)、そしてラストでの服装の変化。それと題字などのアートディレクション葛西薫なのね。力の抜けたテイストは葛西薫的なイメージとはちょっと異なりつつも、素敵だった。大友良英による音楽もさりげなくも印象的で、小川のせせらぎが底辺に持続音のように終始何処かで残り、笙とギターに繋がっていった。

相米監督ならではな印を盛り込みつつも、暴力的なほど破天荒で奇天烈な演出は抑えて、ひょいっと抜けた透明な空気が漂う雰囲気は自らの死を感じ取っていたからなのかはわからない。もっと作品を見たかったと思うけれど、でもこれが遺作というのは粋すぎるよ、とも思う。