「秋立ちぬ」「ロマンス娘」でシネパトスにお別れ

雨の降りのなか午後休取って銀座へ。お昼ご飯を小料理屋で取る。清潔な店内、しゃきっとしたご主人、今日のメニューは鯵のたたき。醤油はほんのちょっとで旨味があって美味しかったなあ。赤出しのおみおつけもいいお味。こういうひっそりと佇む誠実なお店は素晴らしいな。

今月で閉館の銀座シネパトス。この三原橋地下街自体が取り壊しなのだ。この入り口はほんとワクワクするなあ。とはいうものの、私はここによく通った思い出は無く、一番の思い出がリヴェットの「Mの物語」なのでちょっとした筋違いですね、スミマセン。公開時も「何故ここで?」と不思議だった記憶。静かなシーンが多かったので余計に列車の走行音が響く、なかなかスリリングな鑑賞でありました。


さて、最期の特集は”銀座を偲ぶ”映画。本日の上映はまずは、成瀬巳喜男の「秋立ちぬ」、銀座〜新富町界隈に多摩川と、風景映画としてもほんとうに楽しい。晴海の埋め立て地の向こうにぽつんとニョッキと見えたのは公団晴海住宅かなあ違うかなあ。「ロマンス娘」は美空ひばり江利チエミ雪村いづみの三人娘による唄とかけあいがとっても楽しい一本!フィルムがかなり赤く褪せていたけれど、キラキラしてる。ひばりは「ひばり」でしかない貫禄がこの歳でありまくるなあととか、チエミちゃんの自虐っぷりがほんとに泣けてくるよとか、いづみちゃんはやっぱり女の子の憧れだなあとか、、。
それにしても。男の子が屋上で遠くを眺め、三人娘がバイトする、両方にたっぷり登場した松坂屋も今年閉店し、再開発のため解体されてしまう。あの頃は夢の場所だったのにね。今ではバーンと電気店の看板ついとるしなあ。そして高層ビルをくっつけて生まれ変わった歌舞伎座は今日お披露目だった模様。
シネパトスを出る。映画のなかで見た風景は確かに現実と繋がっているけれど、面影だけがオーバーラップする。


映画館もデパートも団地も駅も古くなったから壊します、が正論だと思えるほど見るからに老朽化している。それだけ猛スピードで変貌してきたということなのか。経年しても老朽化しないようにメンテナンスするでもなく、古びても愛着にならず役に立たないと判を押してるような。日本人のメンタリティを考えてしまう。式年遷宮が根底にあるとかナントカ。気候条件の所以もあるだろう。そもそも高度経済成長期に建てられた集合住宅は50年を目処に建替の算段らしいけれど。あの時代、相当急ピッチで建設されただけのことがあるのかな。今建設しているのは50年後どうするつもりなのかな。


デパートの地下に立ち寄ったら大好きなお店のロールケーキが売られていて、お土産に。久しぶりに食べるなあ。生クリームではなく生地が主役なふあふあの味わいで、にまにましながらああっ食べ終わってしまう…と喜びと哀しみが同居しながらぺろっと食べてしまった。