「婚約三羽烏」→「グランド・マスター」

心配していた台風は消えたものの、さらさらそぼ降るこぬか雨。止んだけれど異様に蒸し暑く、エレベーターに乗ったら中に誰もいないのに腐臭が存在感を放っていて、倒れそうになった。
神保町すずらん通りをサクサク歩く、東京堂の女性向け店舗はやはり閉店に。前のふくろう店の品揃えすごく好きだったんだけど、地方出版のものを無くして「一般女性向け」を意識した店内になったことで、男性客は皆無になり、かといって新規女性客も付かずに見えたので、、。モッタイナイなあ。私には何故こんな店舗に変えたのかが謎だったんですが、ここどうなっちゃうんだろなあ。

●「婚約三羽烏昭和スタア列伝―上原謙佐野周二佐分利信 "松竹三羽烏" 華麗なる映画人生

神保町シアターにて。昭和12年製作、「松竹三羽烏」として売り出し中の佐野周二上原謙佐分利信が主演。のんびり呑気なコメディで、徐々に近づく戦争がどこまで市民に伝わっていたのかわからないけれど、飄々とした雰囲気はこの時代ならではなのか、だからこそ映画で夢を見せましょうなのかとふと思う。百貨店が舞台なので見てるだけで楽しい。住宅街のまわりとか、当時の風景や文化が垣間みれるだけで嬉しくなる。でもこの頃の若かりし日の3人は、私にはアイドルに思えないことがよくわかった…。1時間しかないのでサラっと見れるのも良い。


時間があれば勿論歩く距離なれど、三田線に乗ってひとつだけ移動、大手町で下車。

まだほのかに明るくて、翳りのある空の青を眺めていたくて、散歩したくなる。金曜夜の丸の内はキラキラしてて、並ぶ店舗は私には入れないのばかりだけど、街路樹が気持ちよくて落ち着いてるから好きだ。


マリオン、という呼び方も最早…なビルに着いて日劇へ。ここのエスカレーターのとこにはいつもドキドキ、映画を前に胸が高鳴る。
予告が何本続いただろう、ようやく鑑賞時の注意勧告になった…とちらと時計を見たら20分経ってた。映画泥棒〜ピクミンと来て漸く!と思ったら、「特別上映4分間予告」ですよ、ハヤオの新作。ええええ、これが例の。超短編といってもいいくらいの完成度で、目を閉じてしまった。視界がこっちに奪われそうだったから。音楽は荒井由実の「ひこうき雲」でやけに大音量、ボーカルの高音が耳を突く。しかしオルガンの音色がとても良くて、ハッとさせられる。プロコル・ハルムが云々ってのもよくわかる。思えばこんなふうにちゃんと大きな音で聴いたことがなかった。・・・とこうやって書くことで話題に上がってるんだから、しっかり術中にはまってるんだよねえ。

● 結局南極王家衛映画 〜「グランド・マスター」

そういえば「マイ・ブルーベリー・ナイツ」の存在をすっかり無くしていたウォン・カーウァイの新作。あの!イップ・マンを題材にしたカンフー・アクション映画。公開2週目が終わった時点で上映館と上映時間が少なくなり、あまり足を運ばない日劇まで来てしまった。
トニー・レオンはすっかりオッチャンになったなあ。。。おなじみの苦悩顔を見せつつも、イマイチ格好良く描かれていない…。チャン・チェンに至ってはアンタ出てくる理由あったの?って案配で、謎すぎる…。
繰り返されるアクションシーンを壮大な前振りとして、結局のところ最後のチャン・ツィイーのくだりでいつものカーウァイ思想炸裂、トニー・レオンのモノローグは「まさに、、だなあ」って語り口だった。
アクションシーンで飛び散る水しぶきなどの超スロー映像は、「NHK技研によるハイスペック実験映像」のようであったよ。こうやって繰り出されるカンフーの動きはどことなくピナ・バウシュの踊りに近いような気もした。
時の移ろいや「カンフーは縦と横のみ」という言葉に込められた想い、最後に残る切なさとやるせなさはまったくいつもと変わらない…。にしてももっと描いてほしい部分があったなあ。勝つか負けるか、横たわって負けたものは悔いを抱えるのみ。


外へ出ると呑み会帰りの人々で溢れていた。駅のホームは湿気がすごくて汗がダラリと流れる始末。夏、だなあ。飲めないビールが飲みたくなる不思議。