ほとりの朔子

前作「歓待」とはテイストがまるで異なるイメージがタイトルやポスターにあったけれど、いやいややはり、人間の意地の悪い本性がじわじわと滲み出し、最後にはきっちりと込められていた。「ほとり」で佇むように人々の言動としぐさを伺っているのだ。まるで神の視点とでもいうように静かにただ見ている、けれど1週間の曜日が進むごとにひたひたと、芯へ近づいていく。その近づき方と遠ざかり方は人間関係そのものだと思った。「客観」と「錯覚」を語る2つのシーンはとても印象的。
二階堂ふみちゃんは意外なくらいにむちむちと健康的な肉づきだけど、心がこの場に存在していない希薄さがある。そのバランスが素晴らしい。彼女だけでなく、出演者の誰もが素晴らしい演技を見せてくれた。それぞれを細かに言うとネタバレになりそうだから端折るけれど。
やっぱり深田晃司監督のまなざしが、語り口が、すごく好きだ。ああっそれですそれです、って何度も思ったし、こうやって描いてくださってありがとうという気持ちでいっぱい。
ただ、ポスターに使われたあのシーンはいかにもデジタルな画像処理で違和感強かったのと、汗がダラダラ出てしまう夏の暑さが感じられないのが残念だったな。