「愛・アマチュア」「シンプルメン」「はなしかわって」

Hal is Back! ハル・ハートリー特集は自分にとっては祭だったけれど、今回の4作品を土日昼間や平日夜のどの回でも、年齢層が高めで20代皆無だったのがとても切ない。公式サイトも地味だしツイッタアカウントないみたいだし、語る人がいないのかな。でもでも、著名人のコメント集めたり、褒めてる感想ばかり強制的に見せつける宣伝方法を敢えて使わないところに好感! いま若い子が見に行く映画を決めるポイントがよくわからないけれど、日本でまったく上映されなかったこの年月の間に評価されていないのが不思議だなあ。最近流行りのファッションや音楽などを見るにつけ、発見されてもいいのになあ。希子ちゃんが「エリナちゃんの前髪パッツンにアヒル口、ボーダー&革ジャンがカワイイ!」などと言ったりしてないのかしら。

今回のリバイバル上映での鑑賞を終えたので、見た順にここにまとめて感想を。
その1:【アンビリーバブル・トゥルース
>冒頭から89年、という時代性がとても伝わってくる。とてもよかった。ああ、やっぱりハル・ハートリーの映画は素敵だなあ。優しく真摯でナイーブで、でもフラットで冷静なまなざし。言葉の交わし合い、その動き、その言葉、ひとつひとつがさりげなく、時に奇妙に、私の心を突いてくる。(中略)ラストあたり、人物がフレームに入ってくる絶妙のバランスとタイミングに言葉の畳み掛けが見事すぎて、ふわっと心が浮き上がるこの感覚はいったいなんなのだろう。
別途こちらに感想あり(→ http://d.hatena.ne.jp/mikk/20140118/p1


その2:【愛・アマチュア
変な映画ではある。これまでの作品に比べて予算が大幅に付きスリリングで大掛かりな展開もあるけれど、らしさはまるで失っていない。
「それ」を恐れずに手を差し伸べる。これこそハル・ハートリー作品に共通するひいやりとしたあたたかさ。私はあなたのすべてを知っているわけではないけれど「今」目の前にいるあなたを愛するのだ、という想いが向けられたまなざしと手の平と言葉に込められている。私は私が見ているあなたを信じる。
イザベル・ユペールが愛らしくて格好良い。もっさりした姿はトーマスに出逢ってキリリと変わっていく。エリナ・レーヴェンソンの前髪パッツンはほんっとカワイイナア。「わたしたちの宣戦布告」に出てたみたいだけど全然!気がつかなかった。

愛・アマチュア

愛・アマチュア

何度か書いたことがあるけれど、このサントラが私のツボを押しまくるセレクトで大好き。監督自身の偏愛が深く込められていて、単なるロック・コンピなサントラとは違うのです。


その3:【はなしかわって
新作……!ううううう。とはいえ2011年の作品で59分の短編。しかし現在新たに制作中とのこと。
デジタルのキリリと澄んだ映像とファーストシーンに戸惑ったけれど、流れる空気や会話にリズム・・・記憶の中のハル・ハートリー映画とびっくりするくらいに何も変わってない。けれどああ彼も歳をとったなあと思わせられた。それは勿論悪い意味ではない。この何年来の経験を語る率直さがある。
NYの街の映画だと思った。この街で暮らす人の姿が描かれている。幾度か高層ビルの建築場面が出てくるけれど、96年に旅したNYの路上を思い出した。英語も話せないのにひとりでふらふら歩いたなあ。工事現場のオッチャンたちが休憩してて、言葉を交わして写真を撮らせてもらったっけ。
主人公の男がちょっと掴みにくい人物。マーティン・ドノヴァンのような憎めない愛嬌が無くてひっかかってこないんだけど、次第にストンと胸に落ちてくる。不器用で飄々とNYの雑踏を歩き誰かに出会っては何かを渡していく。主人公の心情に寄り添って描かれてはいなくて、NYの街の中で暮らすひとりの男、としての距離感がある。言葉の応酬の妙は無く、男が「動く」ことで繋がっていく。大きな街のなか、常に誰かと誰かが交差しては何かが生まれる。その「何か」をすくい取った素描のような映画。あああそうそう、二階堂美穂も出てたよ!マダムになっててビックリだよ!



その4:【シンプルメン
ああもうほんとに素敵で素晴らしい!思っていた以上に好きだなって気づいた。役者と台詞と映像と音楽のどれもが魅力的で、わたしにとって直球ズバリ、と改めて思う。「アンビリーバブル・トゥルース」との共通項も多々あって面白いな。てか、全作品繋がってるところはあって。
奇妙だけど真摯で、ズレているけどキッカリしてる。湿っぽくないけど繊細で、クールだけど柔らかい。会話の応酬やリズム、モノローグはやっぱり「言葉の人」なんだけど、映像もめちゃくちゃいいんだよねえ。画面の切り取り方や流れ方のセンスが良いなあ。。。って思ってるとあのダンスシーン!のトボケた唐突っぷりにシビレル!!!見ながら立ち上がりたくなっちゃった。(SY、あんな理由で解散しちゃうことになるとはまったく時の流れである)

エリナ・レーヴェンソンの前髪パッツンはほんっとカワイイナア(本日2度目)。ツンとしてるとこもうっとりしてるとこも。マーティン・ドノヴァンのやさぐれっぷりが素敵。

True Fiction Pictures: Music From The Films Of Hal Hartley

True Fiction Pictures: Music From The Films Of Hal Hartley

スコアはハル・ハートリーの別名義ネッド・ライフルだけども、漂うギターサウンドは心地よさがあって好きだ。ヤマジが手掛けたサントラやCDRに入ってる曲を思い起こしたのは、好きなミュージシャンが近しいからかな(こんなことばっか言っててスミマセン)
ヨラ・テンゴのこのPVもさらっとしてて良いのだー。


今回特集上映を手掛けてくださった配給会社の方々、ほんとうにありがとうございました!出来れば新作の上映もどうぞよろしくお願いします!!!
(「トラストミー」や「フラート」もまた見たいなあ。。。権利問題とかあるのかな)
http://www.jvd.ne.jp/cine/halhartley/top.html