今年の音甘映画館 【映画編】

今年は高評価のアレコレにぐっと来ることが少なくって、振り返ると心に残っているのはどれも、奥歯にじわりと感じる哀しさや苦々しさを柔らかく掌に包むような、ちいさいけれど大きく沁み入る作品でした。私はこういう映画が好きなんだな。。。

【新作】

● 「ほとりの朔子」 http://d.hatena.ne.jp/mikk/20140220/p1
「ほとり」で佇むように人々の言動としぐさを伺って、神の視点とでもいうように静かにただ見ている、けれど1週間の曜日が進むごとにひたひたと、芯へ近づいていく。


●「へウォンの恋愛日記」 http://d.hatena.ne.jp/mikk/20140910/p1
ふっと消えゆく寂寥感が、秋の風景とコートの茶色にシャツの水色が合わさって印象的。ヒドい音質で高らかに鳴り響くベートーベンを背後に、若さ故の不安や焦燥感から依存してしまうへウォンが切なくて、心の奥底に張っている糸がふっと揺らいでしまい、今も引っ張られてしまう。


● 「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」  http://d.hatena.ne.jp/mikk/20140620/p1
tired, tired, tired……な果ての、でもやっぱりそうすることしかできないんだよって日々こそが、実は時代をつくっている(繋がっている)のだと、最後に登場した新たな唄い手の曲を背後にしながら思うのだった。


●「ドライブイン蒲生 http://d.hatena.ne.jp/mikk/20140923/p1
遠い記憶を呼び起こすギターの響きに呼応する画面の隙間に、寂びれたハコのなかで不意に立ち上がる光の端に、胸を突かれる。引いたまなざしで淡々と映し出される彼らの箱庭な暮らしをくふくふと笑いながらずっと見ていたかった。だらしなくならずに飄々と身をかわしてこちらをケムに巻き、真剣に楽しんでるさまに、にまにましてしまう。


あとは興奮して静岡のレコ屋に行ってしまったTEENGENERATEの「GET ACTION!!」、私が見たいものが詰まっていた「MUD」、挙がりにくいだろうから挙げておきたい「神奈川芸術大学映像学科研究室」も記しておきたい。それと好き嫌いとは別の次元で、山戸結希監督作品はテン年代前半を締めくくる2014年の象徴でした。

【新作と旧作のマイ・二本立て】

新作と旧作、邦画と洋画、それぞれは本来区分けはなく、同時期にかかってる映画の中からハシゴして「マイ・二本立て」を作ることは楽しい。

● 「ビフォア・ミッドナイト」→ 「・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・」
http://d.hatena.ne.jp/mikk/20140202/p1
ふたりが歩き続ける、近づいていく、歩き続ける。歳を取ったからこそ、感じたなあ。泣いた。

【旧作】

今年やっと見れた!という作品も多くて、ありがたかった。今後映画館で鑑賞不可能な作品が増えていくのだろうな……。

● 「七人の刑事〜終着駅の女」  http://d.hatena.ne.jp/mikk/20140313/p1
阿佐ヶ谷ラピュタにて。1965年公開作品。ひとつの殺人事件を中心に往来の激しい上野駅で交差する人生をドキュメンタリー的に映し出し、当時の社会問題に翻弄させられる人々が抱える翳りがジュッと胸を突く。ラストでは混雑した構内をそのままに、行き交う人々の会話や表情や足取りが生々しく不思議な高揚感。


● 「ハンズ・アップ!」  http://d.hatena.ne.jp/mikk/20140425/p1
飯田橋日仏会館にて。東京国際映画祭2010年上映作品。日々の生活の灯火のささやかな明るさは本来誰にも降り注ぐひかりだ、でもそれはパチンとスイッチがはまるとひとたび崩れ去ってしまう。ああ、こんなかたちで意志を表明することが出来るのだなあ。まさに映画の力だ。怒りをそのまま怒りとして吐き出すのではない。その提示はとても聡明で美しい。


● 「ムーン・ライティング」   http://d.hatena.ne.jp/mikk/20140929/p1
シネマート新宿にて(大スクリーン!)。1982年公開作品。冒頭から緊迫感が張りつめ不穏さが漂うなか、パタパタと転がっていく様を止めることは出来ない。日常のほんの一片が大きなウネリに繋がっていく。「シャウト」も本気でスゴカッタ。目に見える物が音符みたいだった。音が「見えない存在」として強調されて「立ち位置」が面白かったなあ。

【祭り】

ハル・ハートリー特集!  http://d.hatena.ne.jp/mikk/20140221/p1
まさかまさかのリバイバル・・・!定期的に見たい見たいと言ってただけに感激!やっぱりハル・ハートリーの映画は素敵だ。優しく真摯でナイーブで、でもフラットで冷静なまなざし。言葉の交わし合い、その動き、その言葉、ひとつひとつがさりげなく、時に奇妙に、私の心を突いてくる。ふわっと心が浮き上がるこの感覚はいったいなんなのだろう。


● 「THE ”LAST” LAST BAUS」 http://d.hatena.ne.jp/mikk/20140531/p1
あの川沿いをあの街を歩きたくなった「5 windows mountain mouth」も素晴らしかったけれど、街のなかにまたひとつ、「場所」が無くなってしまうことが哀しい。でも建物は無くなってしまっても、ここで与えられた目に見えずお金に換算出来ないものは無くならないし、違う形で続いていけば良いのだよね。今年も映画館が無くなっていくけれど、新たな映画館も復活する映画館もある。劇場を固定することなく「漂流する名画座」というやり方だってあるのだよね。


こんな状況でも新作映画をかけてくれる映画館に、新作の組み合わせの妙を見せてくれる弐番館に、毎回魅力的な企画を立ててくれる名画座に、そして閉館した幾つもの映画館に、敬意と感謝を込めて。


見たけれど感想を書けなかった作品もいくつかあって自分としては心残りだけど、記録としての残し方をちょっと考えていきたいな。さらっと書けるようになりたい。。。
来年も日々の暮らしの中でふらっと映画を見に行くことが出来ますように。